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特集「最高のビッチ」

2018年1月31日

特集「最高のビッチ5」⑨エマ・トンプソン
バーニー・トムソンの殺人日記(2017年 コメディ映画)

監督 ロバート・カーライル

出演 エマ・トンプソン/ロバート・カーライル/トム・コートネイ

シネマ365日 No.2377

極悪所業の女

特集「最高のビッチ5」①ティルダ・スウィントン

主人公バーニー・トンプソンのロバート・カーライルもいいのですが、いちばん笑ったのはバーニーの母、セモリナを演じたエマ・トンプソンです。彼女、確かに「ハリポタ」シリーズにも出ていた、「愛と死の間で」のようなサスペンスもある、でも圧倒的に文芸ものに強いのだ。「いつか晴れた日に」はジェーン・オースティンの「分別と多感」が原作。彼女はこれでアカデミー脚色賞を受賞、「日の名残り」はカズオ・イシグロ原作でアカデミー主演女優賞候補、E.M.フォースター原作の「ハワーズ・エンド」でついにオスカー主演女優賞。他に候補をあげたらきりがない。主演もし、脚本も書き、才能の塊みたいな女性なのである。ケンブリッジで英文学を学び卒業後ケネス・ブラナーが主宰する劇団に参加し多くの舞台に立ち、彼と結婚する。のちに離婚しましたけどね▼つまり、イメージとしてはバリバリの才媛でイギリス映画界のリーダー的存在である。まさかこんなビッチをやるとは、またそのクレージーぶりがブラックで、ロバート・カーライルとともに、イギリス伝統の「黒い笑い」をふんだんにかもしました。スクリーンのトーンは終始赤っぽいセピア色です。この色の設定自体が、ノスタルジックというより、ここよりさき「妄想と禁忌の世界」とでもいうような色分けなのです。カーライルはゲイ映画の「司祭」というシリアスな作品にも、男性ストリップで町おこしをやる「フル・モンティ」にも主演、幅ひろいジャンルで数々の映画賞にノミネートされる演技派であり、本作は彼の監督デビュー作です。しがないグラスゴーの理髪師バーニーの冒頭のセリフ「俺の人生はずっと退屈だった。髪を切るのも家にいるのも退屈。ところが突然人生が変わった」。切断され冷凍で保存された耳、手首、腕、男性の局部が発見され、警察に追い回される羽目になった▼バーニーの性格は理髪店の店主ウィリーによると「陰気な男だ。明るさのかけらもない。客は君に寄り付きもしない。まるでお化けの木だ。20年前父親が君を雇った。しかし店で居眠りするような奴は雇っておけない」とクビを言い渡す。バーニーは店主と言い争っているうちに転倒し、店主はハサミが刺さって死んでしまう。うろたえたバーニーは母親に相談する。家の冷凍庫に入れておきな」という指示に従い、冷凍庫を開けると切断部位が詰め込まれていた。警察はもちろん連続殺害事件の捜査を進める。たたき上げの刑事より、署長(トム・コートネイ)は口八丁、手八丁の女性刑事に捜査を任すが、古参刑事は引っこまず独自で動く。それがまた目障りな女性刑事はいやみと無視で応酬する。バーニーが行くところ、行きがかりとはいえ死体が転がる。その度彼はママに泣きつくのだ。しかしなんでママの家の冷凍庫に冷凍部位がある? もちろんママが殺したのだ。なんでだよ〜と悲鳴をあげる息子を尻目に「クセになっちゃったのよ。せめて遺品は思い出の品にと家族に送った」。ママはシリアルキラーだったのだ▼「まさか僕の父さんまで殺したのでは」「父さん? 客なんかいちいち覚えていないわよ」「客?」「お前はその稼ぎで育ったのだよ」。今頃わかって驚くほうも白々しいが、とにかくママは殺しのたびに解体していたのだ。タバコをくわえてウイスキーをストレートでクイッとやるエマ・トンプソン。彼女は「整形しない派」の代表格です。シワも目立ち、のどもたるんでいますが、堂々とした出で立ち・お姿は、アンチエイジに血道をあげる下々の女優なんか、軒並みぶっ飛ばされそう。事件の犯人はママで、動機は「クセになったから新聞の恋人募集欄で集めた」なんてあまりにもサイコなセリフ。殺人フェチというのか、殺人依存症というのか、極悪所業を煙と共に鼻の先で吹き飛ばしたのはエマ・トンプソンだけ。執念の捜査が実を結び、古参刑事とやり手女性刑事は現場でカチ合わせ。ママはいきなり発作で死ぬ。バーニーは現場で刑事二人が撃ち合って死ぬのを見届け、事件は署長が強引に「三角関係のもつれ」にして決着。バーニーは理髪店のナンバー1となり「オバケの木」だった陰気なバーニーは、人が変わったように爽やかに応対して店は大繁盛。隠して「伝説のバーニー・トンプソン」は誕生したのであった…という「マダムと泥棒」遺伝子直系のブラック映画です。