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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月3日

特集 LGBT―映画に見るゲイ234
ヴィオレット ある作家の肖像(下)(2015年 ゲイ映画)

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監督 マルタン・プロヴォスト

出演 エマニュエル・ドゥボス/サンドリーヌ・キベルラン

シネマ365日 No.2380

美しい救済

特集 LGBT―映画に見るゲイ

「前に語ってくれた話は?」本が売れずに悄気ているヴィオレットにボーヴォワールが水を向ける。「寄宿舎時代のもう一人に性体験の相手よ」「イザベルよ。そんなの、誰も興味持たない。私が売春婦だとしてもこの醜い顔じゃ、誰もお金を払ってくれない。私は敗残者よ。40過ぎて何ひとつない。誰もいない。いつもひとりぼっち」「ガリマールに話したの。毎月送金があるわ。執筆に集中するための支援よ。新作に取り組むことが条件よ」先述したように、ボーヴォワールのイカサマなんですけどね。次作『破壊』は書き進められていましたが、ヴィオレットの感情の激しさが自分自身を食い破ります。ボーヴォワールへの手紙「日々私の書くエロスと、生活との溝が深まっていきます」。神経を苛みヴィオレットは入院。度々錯乱を起こす。やっと退院し、母親が来て娘の体を洗ってやる。今日はこれからボーヴォワールを訪問するのだ。さっぱりとした服に着替えさせ、髪を整え、ヴィオレットは出向いた▼引越しのトラックが来ていた。ボーヴォワールはモンパルナスに引っ越すのだ。「ル・マンダラン」がゴンクール賞を取り「本が売れたの。カーテンは置いていくわ。他に間に合うものがあれば持っていって」「施しは受けないわ」「誤解しないで。そんな関係じゃないわ」「どんな関係?」ヴィオレットは噛み付く。「毎月の手当てだって、ガリマールがするはずないでしょ。あなたでしょ。嫉妬、執着、不幸、みんなあなたのせい。あなたに才能があると言われあなたを信じた。挙句が精神病院で何の未来もない。私の人生から出て行って!」なんたる激情型。ボーヴォワールへの甘えが逆の形を取っている。「求めたのはあなた。変えるのもあなたよ」「できない!」「書くのよ! それが人生を変える。涙も叫びも無意味。書くしかない!」「もう空っぽよ」「もう一度書くの。出生から」「それでどうなるの?」「すべてが変わるわ。あなたの視点が変わったから」有無をいわさぬ、預言者のようなボーヴォワールの言葉に、ヴィオレットは再起のペンを取る。ある夜、ノックの音にボーヴォワールはドアを開く。「原稿を届けに来たの。1000枚よ」憔悴した顔で、すぐ帰ろうとする。「ヴィオレット、飲まない?」こんなやさしいボーヴォワールの声を初めて聞いた気がする。二人とも50前になっている。ボーヴォワールは母の葬儀を済ませたばかりだった。ボーヴォワールが泣く。「私もいつか死ぬのね」「母を失ったら生きていけない」とヴィオレット。「今から読むわ。楽しみよ。序文を書くわ。構想は出来ている。今度こそチャンスを生かすわ」親身ですね。分厚い原稿を手に取る。心配そうに「ここにいていい?」ヴィオレットが訊く。夜を徹してボーヴォワールは読む。ヴィオレットはソファで眠っている。夜の底で、ひっそりと読む女と眠る女がいた。「女性のために、初めて女性の性を語った作家とその作品」が生まれようとしていた。夜が明けようとしていた▼ボーヴォワール自身の言葉で結びたい。「『私生児』は自由を求めて闘う女性の姿が描かれています。フランス社会において女性と文学の関係が変革を迎えつつあります。ヴィオレットは驚くほど率直です。作家には語るべきものがあり、それぞれ独自のものです。運命は克服できることを彼女は示し、自分の言葉で書き続けています。50年代末から私の助言で彼女は書き始めました。自伝を書けと励ますと冗談だと笑いましたが、私は説得しました。彼女は孤独で貧しかった。でも精神はみずみずしく豊かだった。ある日、南仏に行き、山の生活は彼女の官能と好奇心と感性に叶うものでした。彼女は静けさの中で正しく自分を見つめ、世に受け入れられる作品を書いたのです。現実と夢を混ぜて。彼女の夢は私のものとちがい、彼女を孤立させず読者と結びつけました。文学による最も美しい救済です」

 

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