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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月9日

特集 LGBT―映画に見るゲイ240
リリイ、はちみつ色の秘密(2009年 ゲイ映画)

監督 ジーナ・プリンス=バイスウッド
出演 ダコタ・ファニング/クィーン・ラテファ/ジェニファー・ハドソン/ヒラリー・バートン

シネマ365日 No.2386

しみじみとしたいい映画 

なぜゲイ映画の範疇に入れたかというと、劇中のセリフにこうありましてね、ヒロイン、リリイ(ダコタ・ファニング)が家出して身を寄せた、養蜂場の長女オーガスタ(クィーン・ラテファ)が、リリイの母親デボラ(ヒラリー・バートン)の子守をしていたとわかり、リリイが訊きます「ママを愛していた?」「複雑だけど、愛していたわ」「複雑?」「私は子守でママとは住む世界が違った。純粋で無限の愛だったけど、偏見の時代は通用しないわ。でも大好きだった」私の独断ですが、オーガスタ三姉妹は血の繋がりがない設定でもいいのではないか、原作者(スー・モンク・キッド)の脳裏には女性同士が助け合って暮らす、共同体みたいなイメージがあったのではないかと思うのです▼長女はオーガスタ(8月)、次女はジューン(6月)、三女はメイ(4月)、早世したメイの双子はエイプリル(4月)、リリイと一緒に家出したロザリン(ジェニファー・ハドソン)は、オーガスタ家に受け入れられジュライ(7月)という名を与えられます。親からもらった名前ではなく、新しい家族の名前として。三姉妹の成り立ちが、繋がりの濃い、シスターフッドだとしてもこの映画ではとても自然です。ともあれ、三姉妹の存在感がズシ〜ンと重量感がある。心寛大なオーガスタ、クールなジューン、繊細なメイ。リリイは14歳の誕生日の前日、部屋に来たミツバチの幻想に、ハチが自分の人生に強く影響を与える予兆だと思いました。父と母が争っているとき、4歳だったリリイは床に落ちた拳銃を拾おうとして暴発し、母親を死なせたトラウマから抜け切れません。母は家出した。帰ってきたのは荷物を取りに来たのだと父は冷たく言った。たった一つの手がかりであるティブロンという地名と母の写真を持って、リリイはロザリンとティブロンに向かう。ロザリンはリリイの子守です。やさしい黒人女性で、父親がかまってくれないリリイの誕生日にケーキを焼いてあげる。公民権運動で認められた選挙権を取りにいく途中、白人に嫌がらせを受け、殴られ病院にいるところをリリイが「ここにいたら刑務所行きよ」といって連れ出したのです▼サウスカロライナ一番の蜂蜜を作るオーガスタの家を教えてもらう。オーガスタは訳ありの少女とメイドを受け入れ、仕事を与える。やがてオーガスタと母親の関係を知り「なぜ母は私を棄てたのか」と悲しむリリイに、オーガスタはデボラが最後まで大切にしていた遺品を見せます。リリイを抱き上げ、こぼれるような笑顔を見せているデボラの写真でした。「リリイ、人生というものは時とともに変わってしまうものなの。あなたのパパはママを愛し崇拝していた。でも結婚して半年たってママの気持ちが冷めたの」「愛がないのに結婚を?」「お腹にあなたがいたからよ。あなたが生まれてからデボラの電話も手紙もあなたのことばかり。ある日夫と別れると言ってきた。バス停に迎えにいくとすっかり変わりはて痩せこけていた」「そのとき私もいた?」「いいえ、一人だった」。リリイはまたもや「やっぱり私を置いてきたのよ!」オーガスタは辛抱強く「ママはあのときボロボロで、ここに3か月いて回復した。そしてあなたを迎えに行ったのよ」▼女優陣のチームワークがいいですね。リリイの透明感、個性的な三姉妹、ユーモラスなロザリン。彼女が三姉妹の名前を聞き「オクトーバー(10月)とセプテンバー(9月)もいるのでは」とつぶやいたときは笑いました。パパが迎えに来ます。リリイはここに残るといいます。オーガスタは静かな口調で「私たちはリリイが好きよ。養蜂の仕事も覚えた。学校へも行かせます。娘さんは引き受けます」勝手にしろと去りかけたパパに「教えて。ママは本当に荷物を取りに来たの?」パパ「お前の迎えに、だ」。リリイのトラウマは消えました。日記に書く。「私には3人の母親がいる。私を照らす月明かりだ。私は自分を許した。夜中に悲しくなるかもしれないけど、朝にはまた許そう。聖母像のマリアさまの魂は私の中にあるのだ」。無理のない、いい映画でした。