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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月13日

特集 LGBT―映画に見るゲイ244
ジュリエッタ(2016年 ゲイ映画)

監督 ペドロ・アルモドバル

出演 エマ・ユアレス/アドロアーナ・ウガルテ/ロッシ・デ・パルマ/ミシェル・ジュネール

シネマ365日 No.2390

かくも長き不在

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン(上)(2017年 ゲイ映画)

ジュリエッタ(エマ・ユアレス)は町で、娘アンティアの親友だったベア(ミシェル・ジェネール)に出会う。ベアはコモ湖で「娘さんに会った」という。12年前失踪した娘だ。ジュリエッタは娘が結婚し、子供が3人いることを知る。ベアが「お母さんは?」と尋ねると「マドリードにいる」と答えたそうだ。パートナーのロレンソとポルトガルに移住する計画をやめ、ジュリエッタはマドリードに残る。娘はジュリエッタがマドリードにいると思っているから、帰ってきたときにいなければいけないと。アルモドバルの真骨頂、母娘ものだ。娘が行方をくらますことに加え、ジュリエッタを取り巻くミステリアスな登場人物の関係、あれやこれや、アルモドバルは狡猾に引きずり回すが、全てを解き明かす鍵になるのはベアです▼帰らぬ娘を待ちながら、ジュリエッタは娘に手紙を書き始める。「今まで話せなかったすべてを話す。当時私は若くて、辛くて言えなかった。今ではあなたも大人。子供が3人…」。で、どんな展開があるのかといえば全然たいしたことありません。アルモドバルの語り口が巧妙なだけで、夫の不倫も、古くからいる謎めいた家政婦マリアン(ロッシ・デ・パルマ)も、何か秘密を知っていそうだけど、そう見えるだけ(ロッシ・デ・パルマの長い顔が懐かしかった! アルモドバル組の常連です)。物語が急展開するのは二度目にジュリエッタがベアに会ってからです。ジュリエッタは子供時代の娘とベアが、バスケットボールをしていた公園で、昔の思い出にふけっている。「ジュリエッタ!」大声で呼びかけられ、気がつくとベアだ。「どうしたの。この前あったときは元気だったのに」ベアの気遣いが嬉しくて、ジュリエッタは失踪も含め、何もかも話す気になった。ベア「アンティアと会ったことは言ったわね。不愉快な再会だったの。私と話したがらず避けようとした。あなたなど知らないっていわれたのよ。でも仕方なく本人だと認めたわ。私たち、親友以上だったの。一心同体よ。わかる? どんなときも一緒だった。一人では生きられないほど。でも最後は地獄だった」「地獄?」「知らないのね。ニューヨークへの留学は彼女から逃げるためよ。ある日アンティアからピレネーに瞑想に行くと電話があった。私はもう関わりたくなかった。一度電話があったわ。まるで別人になっていた」「どんなふうに?」「あなたとの関係を恥じている。全て忘れたい。私は生まれ変わった。あなたのいない道を歩みだしたと。狂ったような話し方だった。怖かった」▼ジュリエッタは瞑想の期間が終わった娘を迎えに、ピレネーまで行ったことを思い出した。緑の海のような深い山中に、簡素な建物があり、責任者に会った。娘を迎えに来たというと「ここにはいない」という。「よそへ移ったのですか? 今どこに?」「いえません。教えるなといわれています。いいですか。彼女はあなたのいない道を歩みだしたのです。受け入れて欲しいそうです」「娘に何をしたのです?」ジュリエッタの血相が変わっている。「助けたのです。彼女は心から求めていました。とても孤独で不幸でした。精神的な喜びのない日々だったと」「つまり?」「信仰なき家に育ち、ここで喜びを見出したのです。今はとても幸せに暮らしています」「よくもそんなことを!」怒りのためジュリエッタは舌がもつれそうだ。「いつか連絡がきます」。人を馬鹿にしているわ。ジュリエッタは警察にも探偵にも頼み、あらゆる方法で「あなたを探した。私はあなたを知らなさすぎた」と書く▼知らなさすぎた? 知っていたらもっとショックだったわよ。この娘どうかしているわ。好きな女の子に夢中になりすぎて相手が恐れをなし、ニューヨークへ逃げた、がっくりきて頭を冷やしにピレネーへ行ったのはいいが、妙な教えにはまり、母親を捨てて行方をくらました、しかも12年だ。いかれているにもホドがある。かわいそうなジュリエッタ。もともと神経が丈夫でなく、人の影響を受けやすい性格のうえ、ベアの話でショックを受け、ふらふらと車道に出て車にはねられる。幸いジュリエッタが心配でポルトガルから帰っていたロレンソが、常に尾行していたから、すぐ病院に運びことなきを得た。心機一転、ロレンソと新しい生活を始め気持ちも落ち着いた。そこへ、である。スイスの娘から手紙が来たのだ。「愛するママ。今もあの家に住んでいるのかしら。でも他に住所を知らない。私には息子が3人。長男が川で溺れなくした。最悪の日々にママを思った。悲しみを知って私を失ったときのママが想像できた。何も聞かないつもり。ただそばにいたい。でも招かれていない」どこまで自分勝手な娘だろう。「何も聞かないつもり」だって。それ、ジュリエッタがいうセリフだろ「ただそばにいたい」だと? でもロレンソはこういうのだ。「13年の不在の後、封筒に住所を書いてきたんだ」だからなんだっていうのよああ、やっぱり。ラストは野越え、山超え、スイスに向かうふたりの車である。よかったね、ジュリエッタ、ロレンソも立派よ。行ってらっしゃい、気をつけて。幸せを祈るわ。