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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月14日

特集 LGBT―映画に見るゲイ245
タンジェリン(2017年 ゲイ映画)

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監督 ショーン・ベイカー

出演 キタナ・キキ・ロドリゲス/マイヤ・テイラー

シネマ365日 No.2391

人生は生きていくだけ

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン(上)(2017年 ゲイ映画)

クリスマス・イヴ、久しぶりに会ったトランスの娼婦シンディとアレクサンドラ。久しぶりというのは、シンディが28日間刑務所にいたからだ。「おヒサ」「これ半分ずつ?」ハリウッドの裏町のドーナツ・レストランで、小さな皿に一切れのドーナツ。「財布がカラッポだから」そこでシンディは恋人のチェスターが浮気しているのを知る。「知らないの? ちゃんとワレメのある女よ」「売られたケンカは買うわよ。ワレメが何さ」。出所したばかりのシンディが、恋人の浮気相手を見つけるためロスの場末を走り回るのがこの映画だ。彼女らのセリフはコミカルで明るく、テンポがいい。流れに乗って小気味好く進むうちに、しかしどうしようもなくやるせない場面があぶり出されていく。娼婦役には自身もトランスで演技経験のない二人の女優が起用された▼タクシー運転手のアルメニア人、ラズミックは本物の女性は相手にしない。タクシーで街を流し、らしき女性を乗せ「なんだ、これは?」「ワレメよ」「金を返せ、あの界隈をワレメがうろつくんじゃない。降りろ、場違いだ」。シンディは浮気相手のダイナを探し回って見つけ出す。彼女がいたのは娼館、何てものじゃない、小さく区切ったブースがいくつもあり、肌の男が出たり入ったりしている。シンディはダイナが裸足のまま引きずり出し、チェスターに合わせて落とし前をつけさせようとする。街に立っている女に「チェスター、どこか知らない?」「毎日8人の男を相手にしてるんだよ。どの男?」。その日の夜7時からアレクサンドラのライブが会った。いくと約束したからシンディはダイナを引きずったままクラブへ行く。ガラ空きだ。アレクサンドラが歌う。「飲み物は?」「いらない。お金ないから、水。ほら、拍手しな!」シンディに小突かれ、ダイナがパチパチ。白けるような拍手である。ラズミックはイヴの家族の集まりにもソワソワ、アレクサンドラのライブに行きたくて仕方ない。子沢山で妻は美人だ。厳格な義母はイヴの夜に出ていった婿を許さない。「家族の元に連れ戻す」ため流しのタクシーを捕まえる。同業者だからいくらか心当たりはある。そこを全て回ってくれと義母は言いつける▼アレクサンドラのショーが終わり、店を出た。ギャラは、と聞くダイナに「お金払って歌わせてもらってるんだよ」「ヒエー、ダサい!」ダイナはこうも言う「黒人女ってトロイ、ミジメだね。男の電話じっと待つタイプ。自称恋人より町中引き回される方がマシ」ドーナツ・レストランにチェスターはいた。シンディと罵り合いになる。そこへラズミックが加わり義母が到着する。チェスターはアレクサンドラがシンディの親友とやったとバラしアレクサンドラとシンディは一挙に険悪に。「要は女同士の問題さ。俺は関係ない」とチェスターは店を出て、家に帰る者は帰り、ダイナも店に戻る。シンディは「一稼ぎする」と車を止めたものの、コップに入れたオシッコを浴びせかけられ、アレクサンドラがドライ・クリーニングに連れていく。「カツラも洗いな」。イヴの夜は暮れた。どこまでもやりきれない。ドラッグ、売春、ポン引き、金もなくドーナツを半分に分け、飲み物は水を注文する。売春を業とするダイナは不健康に痩せ、青白い顔色を濃いメークで隠す。来る日も来る日も場末のロスの裏町でこんな生活が続くのだ。未来も救いもあるようには見えない。服とカツラが乾くのを待ちながら、シンディが手を伸ばしアレクサンドラの手を取る。何が残酷と言って「ペニスをつけて生まれたのが最大の残酷よ」。手をとって、二人は軽く顔を見合わせる。これは幸福なのか不幸なのか、どう呼べばいいのかわからない。ただ一つ、人生は生きていくだけ。

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