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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月15日

特集 LGBT―映画に見るゲイ246
ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち(1980年 日本未公開)

監督 ペドロ・アルモドバル

出演 カルメン・マウラ

シネマ365日 No.2392

女たちの開放感

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン(上)(2017年 ゲイ映画)

スペイン映画がキッチュ、コミック、ポップの要素を持つのはこの映画を嚆矢とする、とまことしやかに伝えられている伝説のアルモドバル処女作。まあ、そう言われるの、無理ないわね。見ているだけで暑苦しい、サイコーの登場人物はこの女たち、ペピ、ルシ、ボンだ。続けて三度ほど読み下すと、アラジンの魔法の呪文みたいに聞こえる。そろいもそろいエキセントリックな人物で、土俗的・通俗的・ハチャメチャを通り越して爽快に至る。すべての教訓、説教、イマジネーションを拒否し、現実にどっぷり、人生のはらわたをつかみ出し、ジャブジャブ洗濯して大脳に詰め直したように風通しがいい。主演のカルメン・マウラはこのとき35歳、監督のペドロ・アルモドバルは29歳、マタドール(闘牛士)のような青年でしたベランダで大麻を栽培していたペピは刑事に踏み込まれ、レイプされる。見返りは大麻を見逃してくれることだ。警官は友だちルシの旦那だ。復讐の鬼と化したペピはボンを誘ってルシを暴行する計画を立て、ルシに編み物を習うことから始める。ルシは極度のマゾだ。「間違ったらあなたをぶつわ」とペピ。「そうして欲しかったの。奴隷のように扱ってほしいと思って警官と結婚したのだけど、母親みたいに大事にされているの」「望みどおりあなたをぶってあげるわ」「考えただけで濡れちゃう」「わたしをレイプしたのはあなたの旦那よ。処女を売れば6万ペソになったのに。復讐してやる」そこへボンが現れる。ルシ「40代の年増女はわたしの好みよ」。ボンがトイレに行こうとするのをペピが止め、出す前にルシにかけて熱を冷ましてやってと頼む。ルシはビショ濡れになって恍惚。家に帰ってきたルシを警官の夫は「どうして濡れているのだ」と問いただし、妻の女友だちをボロクソ。「俺は自立した女が嫌いだ」「女だって生きがいは必要よ」「料理を楽しめ。俺は腹が減っている。女のくせにズボンを履くの、やめろ」▼女性蔑視・女嫌いの権化のような旦那である。しかるに彼が酒に溺れるのは、親友のオスカルが彼氏を作ってから、らしい。ある日警官は妻に暴力を振るい、ルシは大怪我をして入院。見舞いに来たペピとボンは夫を病室から追い出しルシにいきさつを訊く。「夫には逆らえないわ」とルシ。「どうしたの。様子がヘンよ」とペピ。「あなたたちが思うより、私はアバズレなの」とルシ。「あなたたちはわたしをメイド扱いした。夫はわたしを殺しかけた」。つまりルシとしては自分を殺しかけた夫のほうが、自分を大事にしていると思えるのだ。殺すほど殴ることはルシにとって愛の証なのだ。「なんてバカ女なの」とペピ。でもルシは「親切にしてくれてありがとう。あなたたちのおかげで彼は乱暴になったわ」病院を出たふたりは「むかつく!」「どうする?」「今は思いつかない」「ボン、うちへ越してきたら?」とペピ。「一日で何もかもが変わったわ」「新しい人生が始まろうとしている」「あなたもね」「そう願うわ」ペピとボンの同棲が始まるところでエンド。個々の女たちはそれぞれに混乱していて、それを屁とも思っておらず、自分ではしっかりレールの上を歩いていると思っている。ペドロだけが彼女らの逸脱を知っているが、この監督は女たちをあまり堂々と描くので、見ている方はいつの間に彼女らのほうが正しいと思い始め、そうだな〜、人間の作ったタブーなんて所詮人間の決めたことだしな、そんなこと、どっちだっていいじゃん、みたいないい加減な気持ちになる。それが妙な開放感なのだ。彼女らは6万ペソで体を売り損ねたと腹を立て、マゾ女を痛めつけて快楽を与えるのが友情だと信じる、いかれた女たち。根無し草のように自由で孤独で寂しくて、そのくせ誰の世話にもならないで生きるエネルギッシュな女たちが、例えようもなく魅力的だ。