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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月21日

特集 LGBT―映画に見るゲイ252
ナチュラル・ウーマン(1994年 ゲイ映画)

監督 佐々木浩久

出演 嶋村かおり/緒川たまき/中島ひろ子

シネマ365日 No.2398

どうして難しくするの?

特集 LGBT―映画に見るゲイ

いくつかわからないことがあるわ。まずどうして花世(緒川たまき)は飛び降り自殺したのか。パートナーの容子(嶋村かおり)は花世が好きなのだけど花世は扱いにくい女だった。二人は漫画同人サークルで知り合い、花世はアマチュア漫画界のカリスマ。容子は抵抗しながらも花世に惹かれ、同棲を始める。二人の共作で仕事を進めるが、貶し合い衝突を繰り返す。容子は花世が自殺した後、掃除のアルバイトをしながら漫画を描いている。採用したいという編集者も現れるが、容子は前向きになれない。アルバイト先でプロボクサーを目指す由梨子(中島ひろ子)に出会い、どっちも惹かれるが、花世の幻影に苦しむ容子は踏ン切りがつかない。感受性の強い繊細な子なのね、容子は▼花世は3ヶ月ごとに男を変える女だったらしい。「男と女とどう違う?」と容子は無邪気に訊く。「容子は男を知らないものね。男相手だといろいろ我慢しなくちゃいけないの。我慢できないからすぐ別れていた」。で、ベッドで容子が花世にヘビーなタッチをしようとすると厳しく「触らないで! 容子が汚れる」…文学的すぎてよくわからんのだけど。容子にとっては花世が全てだ。花世はネンネの容子をいたぶるような愛し方をする。「ナイン・ハーフ」に似ているシーンだけど、ぶどうを絞って潰してベタベタ裸の容子の背中にたらし「私のこと、好き?」「好き」「ホントに?」「好きよ」「私はあなたを汚しているのよ」「それでも」花世、ベタベタの背中に重なる。ああ、気持ち悪い。どう見ても心地よいとは思えんのだけど、それでも「好きだ」と言っているのだから、花世は容子を信じてやればいいのに複雑なのね。容子が共作の本の出版サイン会を喜んでいるのが気にくわない。「何が気にいらないの?」「あんな本を得々としているところが。サイン会やるとかよ」「私がおめでたいとしたら、花世は見栄の塊よ」バシバシ頰を張り合い、どっちも口から血が出る。花世が舐めようとして突き飛ばされる。「私のこと、嫌いになった?」と花世「いいえ」と容子。いつまで続けるの、このたるいやり取り▼別れると決め、容子がアパートの部屋をでる。玄関に来ると上からパラパラ、焼け焦げの共作の漫画のページが落ちてくる。容子は「危ないじゃないのッ」叫んで部屋に駆け上がる。ドアを開けた。花世がクラッカーで花吹雪を散らし、笑顔で迎えてくれる幻を見た。でもそこには誰もいない。彼女は飛び降りていたのだ。窓だけが開いていて、窓の向こうに虚空があった。以来容子は世捨て人同然である。今は由梨子と付き合っている。同人のサークルの場所だったビルが取り壊されることになり、容子は過去に決着をつけるため、無人のまま荒れた部屋を由梨子と訪れる。廃墟だ。埃に埋もれた共作の残骸を発見する。花世は容子のページを残していた。彼女が破いて燃やしたのは自分の作品だけだった。花世が深い部分で自分を愛していたことに容子は気づく▼容子と由梨子は取材旅行に出た。二人きりだ。「むかし好きだった人、忘れられないンでしょ」と由梨子は容子を責めていたが、何しろボクサーを目指す子だから、一発や二発パンチを食らったくらいでへたばっておれない。容子にキスしようとして邪険に押しのけられ、アタマにきて罵っても、やっぱり好きは好きで、どうしようもないらしい。でも賢い子だから、今は時期尚早と見た。旅館の浴衣を着て廊下を歩きながら「いつかしようね」と笑って容子の背に抱きつく。いいわね、こういう明るい子(笑)▼最初の疑問に戻るけど、花世は袋小路に追い詰められたのね。アマチュア漫画界のカリスマから見れば、容子は物足りなくてウザかったかもしれないけど、花世だって所詮アマチュアじゃない。プロにはなれず、自己放棄して、ペットショップの店員になっていたくらいだもの。虚無感にあぶられていたのでしょうね。花世は、容子にも自分自身にも寛容であればうまくいったでしょうに。才能のある子なのに残念ね。若いときってなんでもないことを難しくしがちなのよ。それが青春の特権みたいに思えてね。あとから見れば屁みたいなことに。ヘドが出る人生の修羅場はこれからだってことがわからないのね。由梨子のような分かりやすい朗らかな子を、容子は受け入れてあげたらいいパートナーになれると思うわ。お幸せに。