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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月24日

特集 LGBT―映画に見るゲイ255
ベルベット・ゴールドマイン(1998年 ゲイ映画)

監督 トッド・ヘインズ

出演 ジョナサン・リース=マイヤーズ/ユアン・マクレガー/トニ・コレット

シネマ365日 No.2401

ちがう夢を見ればいい

特集 LGBT―映画に見るゲイ

監督がトッド・ヘインズ、音楽にカーター・パーウェル、衣装にサンディ・パウエルとくると、そのままヘインズ組が「キャロル」に移ったみたいです。サンディは本作でもアカデミー衣装デザイン賞にノミネートされています。1970年代のロック・ミュージシャンの「制服」だった「光る衣装」のまあ、きらびやかなこと。お話はかなり込み入っていますが、主人公ブライアン(ジョナサン・リース=マイヤーズ)の妻、マンディ(トニ・コレット)が、交錯する時間軸とブライアンと彼のゲイの相手、カート(ユアン・マクレガー)の破滅と変身をうまくまとめています。ヘインズ監督はブライアンにせよ、カートにせよ、彼らが「ただの人」になった原因を、ファンの移り気のせいでもなく、時代とか社会とかのせいでもなく「夢を忘れたからだ」とマンディに言わせているところが、騒々しいこの映画に冷徹な一瞬の静寂を与えています▼アーサー(クリスチャン・ベイル)はヘラルド紙の記者。デスクから「ブライアン、あの人は今」の追跡記事を書けと指示され、10年前のロックスター射殺事件を探る。ゲイで結びつく男が本作には3人、二人はブライアンとカートで、後一人はアーサーです。ゲイであることで白い目で見られていたアーサーは、ステージの上で自分たちのセクシュアリティをアピールして、社会に猛烈なインパクトを与えている彼らにいかれてしまった。突然ブライアンがステージで射殺される。実は音楽に行き詰まった彼が、引き際を演出するための狂言だったとわかりファンは失望、人気は凋落し、世間から姿を消して10年。アーサーはかつてのエージェントやプロデューサーに取材し、元妻のマンディに行き着く。彼女は「7年も彼と話していない、何もかもダメになって別れた、別れ際のブラインはドラッグに溺れまるで別人だった」と語り、当時ロック界に君臨したスターたちが軒並みボロボロになっていくのを見ていた。「あるロッカーはホテルやクラブで客を取っていた。時代も人もめまぐるしく変わり、進化への折り合いをつけるため、変わり者が選ばれる」。ポップス・チャート1位に連続18か月選ばれていたブラインは、ロックは売春だと広言し、見せかけのイメージ作りに徹していた。カートはヘロイン中毒でとっくに売れなくなっていた。カートのワイルドなステージ(舞台で下半身を露出する)に圧倒されていたブラインはカートと組むことにし、二人は恋に落ちた。だがそれもカートがドラッグにはまったため、エージェントは見限る。マンディは「私たちにはゴージャスな時代があって、夢に生きていた。ブライアンにはカートも自分自身も幻だった。頭の中で描いた幻の中で、いつか自分も迷子になったのね」▼彼女の叙述を聞いていると幻想的で詩的だが、剥いた話をすれば狂言自殺を企んで世間から隠れたブライアンは、トーマス・ストーンと名乗る別人として人気歌手になっていたのだ。泳ぎ抜いたことを立派というべきか、計算高いパフォーマーと見るべきかわからない。アーサーは現在のブラインの正体を突き止めたが、デスクはボツにする。何しろトーマスはアメリカの文化復興委員会の名士なのである。ブライアンのように立ち回れなかったカートが、アーサーの取材に、ブライアンの失踪について何も知らないと沈黙を守り「俺たちは世界を変えようとして自分が変わってしまった」と話す。夢に徹しきれずに舞台を降りた男に「それはいけないことですか」と問い直すアーサーがいい。めまぐるしい進化から外れてもいいではないか。夢を忘れてもちがう夢を見ればいいじゃないか。この二人は、過去の幻を捨て、別の人生を見出すかもしれない。そんなかすかな希望を感じさせます。ユアン・マクレガーがぶったまげる熱演だった。