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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年2月25日

特集 LGBT―映画に見るゲイ256
ストーンウォール(2016年 ゲイ映画)

監督 ローランド・エメリッヒ

出演 ジェレミー・アーヴァイン/ジョニー・ボーシャン/ジョナサン・リース=マイヤーズ

シネマ365日 No.2402

虹の彼方

特集 LGBT―映画に見るゲイ

私の見落としなら勘弁して欲しいのだけど、ストーンウォールってゲイバーは女人禁制というか、男のゲイしか入れなかったの? 女同士のゲイはダメだったのかしらね。画面で見る限り異性装はあったけど、男ばかりだったと思うわ。それに、主人公のダニーって、調子よすぎない? 私、この映画でいちばん好きな人物は黒人のレイです。クリストファー・ストリートに現れたダニーに「夜のレディたち」を紹介し、ダニーが自分のセクシュアリティで悩んでいるのがわかっているから「今ここにいることが大事なのよ。ニューヨークへようこそ」フラフラ迷っていないで腹を決めろ、というふうに取れる言い方をします。レイはダニーが好きで、何くれとなくかばい、警察のガサ入れからも助けてやり、でもダニーはレイと友だち以上の関係にならない▼それはいいとしても、ストーンウォールの反乱があった翌日、道路上は暴動と、それを鎮圧する警官のぶつかり合いで戦場さながら。そんな朝に、ダニーはさっさとクリストファー・ストリートから去ってしまうのです。ストーンウォールの窓ガラスに、ダニーが「ゲイ・パワー」と叫んでレンガぶつけたのが反乱のきっかけだと映画はしていますから、彼が決起の張本人でしょう。それがあっさり事件の収拾も見届けずに大学に帰っちゃうのね。彼は故郷の実家で、ゲイであることがわかり、厳しい父親から勘当、入学が予定されているコロンビア大学で学ぶべく、ニューヨークに来てクリストファー・ストリートに姿を現した青年です。そこでゲイ解放活動家らと知り合い、ストーンウォールに出入りして駆け出しの男娼みたいなことをして、すっかりゲイ社会に打ち解けたはずなのに、白人のマジョリティ社会から抜けきれないのね。おまけに大学入学後、故郷に一時帰郷して昔の恋人を訪ね、元気そうだ、ああだ、こうだと無駄話をしながら、彼が結婚し子供も生まれる、ダニーとよりを戻すのなんかごめんだと、はっきりわかったのに未練ありげなのよ。この優柔不断、信じられる? 田舎の元恋人以外にこの世に男はおらんのか。コロンビア大学なんてアイビーリーグの名門じゃない。それなりに気の合う男の一人や二人、寄ってくるでしょうが。とにかく踏ン切りが悪いのだわ▼レイは違うわよ。売春稼業であれば客にはサドもいる。立場の弱い相手には暴力を振るう。どんなひどい目に合わせたって、彼らは警察に訴えないし、たとえ訴えたとしてもブタ箱に入れられるのは黒人だ。ストーンウォールの反乱は1969年6月28日だった。当時米国連邦法は同性愛者の雇用を禁じ、同性愛者は精神疾患だとみなした。彼らが店で酒を飲むことも集会を開くことも違法だった。殴られて半死半生になって帰ってきたレイにダニーは「売春はやめな」。レイ「私らには家も仕事もない。家族もいない。誰も私を必要としない。あんたは離れていった。こうして暴力を受け入れる生活を続けるだけ。客は私を見下すために暴力を振るう」。底辺から見据えた明晰な現実把握。レイは12歳で売春を始めた。愛には醜い残酷な面があることを、他のどんな登場人物よりレイが表していると思える。映画は一挙に反乱その後に飛んで、1970年6月、ゲイ解放を求める行進が初めて実施されたことでエンドとなる。それだけ? そもそもこの映画でジュディ・ガーランドにきちんと触れていたのはレイだけね。ロンドンで、わずか47歳で死んだ母の遺体を、娘ライザはニューヨークに運び、ストーンウォールのすぐ近くの教会で葬儀した。母を殺したのはハリウッドだと信じて疑わなかったからだ。ジュディはゲイ支援をオープンにした数少ない味方だった。6月28日とはジュディの葬儀がすんだ夜だった。レイは言っている。「『オズの魔法使い』のドロシー(ジュディ・ガーランドが演じた)は私たちよ。虹の向こうに夢を見るのよ」このセリフとレイがいなかったら、ヘタレの主人公だけで映画は保たなかったでしょうね。