女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「春が来た、3月のベストコレクション」

2018年3月7日

特集「春が来た、3月のベストコレクション」⑦
ミッション・ワイルド(上)(2017年 社会派映画)

監督 トミー・リー・ジョーンズ

出演 トミー・リー・ジョーンズ/ヒラリー・スワンク/メリル・ストリープ

シネマ365日 No.2411

荒野の旅

アメリカのネブラスカの小さな集落。ヒロインは一人で暮らしを切り盛りするしっかり者のメアリ・ビー・カディ(ヒラリー・スワンク)。彼女は劇中、二度こんなセリフを言います。最初は近所の農夫ギッフェンに料理を供し、食べている彼に「なぜためらうの。一緒になる気はない? 私と土地や家畜、農具と生活、すべてを共にする。二人で私の資金を活用し土地を開墾できる。子供ができればなおいい。どの面から見ても上手くいく。結婚しましょう」。男は二の足を踏み「僕は東部で妻を探す」「ギッフェンさん、私を拒まないで」「カディさん、申し出や親切には感謝しますが、あなたは結婚対象じゃない。君は僕に対し威張りすぎる。平凡だしね」。メアリの出身はニューヨーク。大都会からなぜこんな田舎に来たのか、わけは語られない。彼女はピアノを弾き、音楽を愛し、妹は医者に嫁いで息子を産んだ。経済的に不足ない家で教育を受けた女性だとわかる▼彼女の家は狭いがきちんと整頓され、鍋は磨き上げられ、チリ一つなく、屋根裏部屋の寝室の窓辺には花。無駄な家具は一つもない。その彼女が10世帯もない僻村の、これといって特徴のない男から「平凡だ」と言われている違和感。二度目は、メアリの相棒となった無宿人ブリックス(トミー・リー・ジョーンズ)に言うこれ。「ブリックスさん、彼女ら3人を引き渡したら、私と結婚してネブラスカに帰りましょう。私は31歳だし早く結婚したい。私の家と家畜を見たでしょ。土地と、銀行に貯金もある。私は健康だし、子供も産める。来年の春には子豚を飼う予定もある。夏には小麦を収穫するわ。カボチャも試すつもり。いい夫婦になるはずよ」ブリックスは嫌だと断る。「結婚はしない」「私は地味だし平凡だものね。でも気がおかしくなった女性3人を故郷に送り届けるのは素晴らしい善行よ。人生で最高の行動になるはず」「俺は謝金300ドルのためだよ」▼思うに、男が女に言う提案だったら喜んで受け入れる女はいただろう。女がいうから男は気に入らないのだ。「威張る」とか「平凡だ」とか、自分の支配下からはみ出す、出来のいい女は操縦できないからキライなのである。男は本質的に女嫌いであり、女性蔑視なのだといっても、少なくともこの映画では的外れではない。女3人を640キロ離れたミズーリへ移送するのは、集落に嫁いだ嫁たちの神経が参ってしまったからだ。見渡す限り地平線まで家一軒もない。夫から家事労働と子を産む道具としかみなさない妻、17歳で嫁いだものの、荒涼として話し相手もいない環境にウツになった妻、知性を失い言葉を忘れ、暴力で自分を主張するようになった妻。メアリは先住民の襲撃や過酷な気候、盗賊の襲撃などが予想される一ヶ月に及ぶ荒野の旅を引き受けるのだ。彼女の人道的精神ゆえだとしよう。しかし、彼女はブリックスから拒絶されたあと彼と関係し、朝には首を吊って自殺するのである。どうして? 彼女はあれほど献身した女3人の移送を放擲するのだ。崇高なミッションも何不足ない生活も、うちすててしまうのだ。