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特集「春が来た、3月のベストコレクション」

2018年3月10日

特集「春が来た、3月のベストコレクション」⑩
ライオン/25年目のただいま(上)(2017年 事実に基づく映画)

監督 ガース・デイヴァス

出演 デーヴ・パテール/ニコール・キッドマン/ルーニー・マーラ

シネマ365日 No.2414

なぜインドからオーストラリアへ

ニコール・キッドマンの圧勝だわ。映画を見る前からどうしても腑に落ちなかったのが、5歳のストリート・チルドレンをどうしたらインドからオーストラリアに養子に迎える気になれるか、ということだったのね。他にも選択肢はあったと思うのよ。貧困を極めた孤児の収容施設からひき取らなくても。やがて物語が進み、養母スーの告白で事実が明らかになる。ジャケ写には「オーストラリアで幸せに暮らす青年サルー。しかし彼には隠された驚愕の過去があった」なんて書いているが、5歳で迷子になって、幸運にも理解ある養父母に引き取られ、養子になったことが「驚愕の過去」かよ。もったいぶった書き方するなよ▼スーはサルーと時期を同じくして養子にしたマントッシュがいる。マントッシュは性格の難しい子で、世間と折り合いがつきにくい。家を出て一人暮らしをし、養父母を心配させる。できのいい孝行息子であるサルーが悩ましげに養母にいう。「ママに本当の子がいれば」「なんですって?」「本当の子なら白紙で生まれた。僕らは過去を背負っている」スーは意外にも「子は持てたのよ。でも産まずに二人の養子をもらおうと夫婦で決めたの。夫と結婚したのも同じ考えだったから」。私、このシーン、かなりショッキングでした。スーは続ける。「世界は人で溢れている。子供を産んで世界がよくなる? 不運な子供たちを助けるほうが、意義がある。それで苦しむことになったけど(マントッシュのこと)、苦しみなどどうでもいいの。私の生きる道はこれしかなかった。12歳のとき幻覚を見たの。神経を病んでいたのかもしれない。父はアルコール依存症だった。性格が歪んでいて抑制が効かなくなると、私は目の前の畑の地面が私を飲み込んでくれればいいと思った。そのとき強い電気ショックを感じた。気づいたら畑の向こうに茶色の肌の子がいて、私のすぐそばに来た。生まれて初めて喜びを感じた。そのとき私は自分の未来を見ていたの」▼スー自身、父の暴力や虐待があったと思わせる。幻に見た茶色の肌の子が自分の救いだと彼女は信じたのだ。そうよね。こういう神的な、稀な経験がなければ、はるばる養子をもらいにいかないわよね。温かい家庭で何不自由なくサルーは教育を受け、メルボルンで経営学を学ぶ。ルーシー(ルーニー・マーラ)という恋人もできた。ある日ふと焼き菓子を見て、子供時代の記憶が蘇る。サルーには母親と兄と妹がいて生活は極貧だったが母は愛情深く、兄はしっかりした若者で、妹は可愛かった。幸福な家族だった。夜、仕事に出る兄に無理やりついていったサルーは真夜中の駅で迷子になり、列車に乗ったまま、1600キロ離れたカルカッタに運ばれる。売り買いされそうになったサルーは逃げ回り、着の身着のまま、落ちている物を拾い食いしながら孤児院に収容される。そこで、サルーは賢い、性格もいい子だったのだろう、養子縁組を仲介する女性が、スー夫婦に紹介したのだ。