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特集「ヤバい女2」

2018年3月28日

特集「ヤバい女2」⑧
しあわせな孤独(2004年 恋愛映画)

監督 スサンネ・ピア

出演 ソニア・リクター/マッツ・ミケルセン

シネマ365日 No.2432

ついてなかったのさ

特集「ヤバい女2」

スサンネ・ピア監督にしたらイマイチね。デンマークで大ヒットしたらしいけど。一瞬の事故で空中分解した家族と恋人たち、ふた組の愛を扱っています。共感できなかった。ヨアヒムは事故で全身麻痺、しゃべることと考えることはできるけど、一生寝たきりの体になる。婚約者のセシリ(ソニア・リクター)につらくあたり、介護してくれるやさしい看護師を侮蔑する。彼女は過去に息子が溺死したという辛い過去がある。ヨアヒムは意地悪くそれをほじくりかえす。醜怪だわ。彼を演じるニコライ・リー・カースは誰あろう「特捜部Q」のウツ刑事カールよ。ピア監督と一緒に作った「真夜中のゆりかご」では幼児虐待のジャンキー男。妙に存在感ある男を演じます。婚約者に拒絶され苦しむセシリに加害者の夫ニルス(マッツ・ミケルセン)が、なにくれと相談に乗るうち深い仲になる。これもどうでしょう。セシリが若くて美人だからせっせと世話を焼いただけで、中年のおばさんだったらここまでしたか▼ニルスの妻マリーはすぐさま勘づくが、何しろ子供3人を抱える身、悶着を長引かせず家庭第一に自分を取り戻す。それはけっこう。でもね基本がおかしいのよ。ニルスがマリーの車にはねられたのは、車道側で窓を開けたセシリと長々しゃべってしつこくキスしていたからでしょう。大都会(コペンハーゲン)だったら車の一台や二台、すれすれで通るわよ。それにマリーは娘と口論の最中だった。いくら口論していたって、ハンドルから手を離すのかい。免停にも免許取消になったふうもないし。ニルスときたらたちまちセシリと同棲に至る。買い物に行って二人の部屋のためにソファを買う、ベッドを二つ買う、瀟洒なスタンドを買う、彼は医師だから収入はいいかもしれないけど、完全に有頂天で妻子は眼中になし。この調子で愛だ、恋だ、と聞かされてもね。彼は妻と別れてセシリと暮らすことを選ぶ。ヨアヒムはセシリが見舞いに来なくなると「戻ってほしい」とすがる。セシリが戻る? 戻らないわよ。ヨアヒムは「脚は二年後には萎える、腕はスパゲティみたいにたれさがる、遠からず切断して、ペニスだけが残る」残酷な未来を知っている。別れることを決心し、セシリに「時々見舞いに来てくれたらそれでいい」と告げる。辛い選択だと思うけど、自分自身を取り戻したヨアヒムになぜかホッとする▼さてソニア・リクターです。このとき28歳でした。本作の前に「白昼夢に抱かれる女」を撮っています。不倫に走ったキャリア・ウーマンが捨てられる話。「特捜部Q檻の中の女」では失踪した女性議員。檻に監禁され獣のような扱いを受け、殺される寸前に刑事カールが救出する。「獣は月夜に夢を見る」では、人が狼になるウィルスに感染した母親。娘の背中に金色の毛が生え出し、人狼感染(とでもいうか)した娘を痴呆のように見ているしかない母親を演じました。「白昼夢」の頃から割と注目される女優でして、幸福なマドンナ役ってあまりやっていない、というか、似合わないと知っているみたい。本作だって、どっちもが「待ってました」ってなりゆきよ。それを「僕たちはこうなる運命だったのだ」という陳腐なセリフでくくっている。ピア監督らしいシャープなセリフを喋っているのはヨアヒムね。彼がセシリに「僕らはついていなかったのさ。それだけさ。苦しむことないさ。また会おう。それでいいね」と別れを告げるシーンこそ泣ける。男の絶望に比べたら運命だなんて言っているニルスにセシリはおめでたいものよ。