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特集「ヤバい女2」

2018年3月29日

特集「ヤバい女2」⑨
人工警察官エマ(2016年 劇場未公開)

監督 アルフレッド・ロット

出演 パトリック・リドレモン/ソレーヌ・エベール

シネマ365日 No.2433

わがよき友よ

特集「ヤバい女2」

いやみのない作品です。タイトルがズバリ「人工警察官」ですからね、アンドロイドの美しい警察官が驚異的な能力で、人間社会の事件を解決する。走れば時速60キロ、遺体を一目見て検視もしないうち、血液型や死因を見抜く。遺留品だけで被害者の人間関係や性格、嗜好を的確に読む。でも彼女はケロリ、「そう訓練されていますから。飲みも食べもしません。でも奇妙に思われるのでフリをします。恋人? いません。私の過去? 知りません。裁判のデータはすべてインプットされています。法的な判断はお任せください」。こういう部下を持ったパリのある警察署の中年の警部(パトリック・リドレモン)は、戸惑うばかり。彼の上司は「エマにないのは人間性だけ。それを教えてやって。部下育成に定評のあるあなたなら適任」と押し付けられた。人間とアンドロイドのギャップを、アルフレッド・ロット監督は簡単な略図に終わらせていません。彼には(劇場未公開であったものの)「スマイルコレクター」という佳品があります。侮ってはいけない監督です▼し・か・し人工知能も、一時はシリアスな内容が目立ったのですが、随分くだけてきました。リドリー・スコットみたいに人類の根源を求め銀河系の異星人に行き着き、遺伝子融合と改変で怪物を生み出し、それが人間を滅ぼし…その先どうなるかまだわからないという遠大な思想も人工知能には託されているわけですから、彼からすれば「アハハ」でしょう。でもいいのだ。エマのキャラも真面目に作ってあって好感が持てます。彼女の洞察力や、一知半解どころではない。一瞥で真実を見破る。旦那の浮気を「ひょっとして…」と疑念すらさしはさまず、帰宅したら開口一番、あなた相手は誰それね、と発する妻に似ている。神のごとき洞察は考えることすら不要なのであります。おまけに男だからうといとか、女だからわかっていない、という人間の性別に属する類推はまったく用をなさない。エマの判断は事実がさし示す根拠のみ▼捜査に行き詰った警部がデスクで頭を抱えている。エマが猫のように近づき、首筋に触れる。警部が飛び上がる。「なぜ驚くの?」「首に触るからさ」「友情を示すときのしぐさだとデータにあったから使った」「友情? それよりもっと濃密な親しさだな」エマは被害者とその親友の女性をあげ「二人の写真も首を触っていた」警部は飛び上がる。エマの観察力と記憶力に瞠目する。彼女らの関係から事件はひもとかれ、本ボシがあがった。警部チームは祝勝祝いにエマの部屋を訪れる。広い空間にチリひとつ落ちていない。特色はほとんど家具がないことだ。セレモニーの意味がエマはわからない。まずは乾杯だ。「ワインを持ってきたから、グラスを」エマは微笑み、自分の分のグラスを一つ、持ってきてチョンとテーブルに置く。一同ギャグだと思って爆笑。服はいつも同じ服で痛痒を感じない。こんなディテイルを積み重ね、監督はエマの全体像を親しく、魅力的にさえ作り上げていく▼電話のナビにさえ対応できないアナログ警部と、ハイテク最先端のエマだ。しかし近未来に私たちは、最高度のアンドロイドを友とする日が来るにちがいない。愛も悲しみも絶望も彼らに託すことを、エマは可能とするかもしれない。