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特集「ディーバ16」

2018年4月1日

特集「ディーバ16」イザベル・ユペール①
エルELLE(上)(2017年 サスペンス映画)

監督 ポール・バーホーベン

出演 イザベル・ユペール

シネマ365日 No.2436

彼女

特集「ディーバ16」イザベル・ユペール

エル(ELLE)とは「彼女」ですね。これが最も本作の、そして同時にイザベル・ユペールという女優の本質を表しているように思えます。主人公の名前がタイトルになった作品で佳品、名作は多い。イザベル・ユペールにも「ガブリエル」があり、「ヴィオレッタ」がある。他には「ソルト」(アンジェリーナ・ジョリー)、「キャロル」「ブルージャスミン」(ケイト・ブランシェット)「マリアンヌ」(マリオン・コティヤール)「オルランド」(ティルダ・スウィントン)などがすぐ思い浮かぶ。でも本作は「彼女」だ。個性がないというより、それが表面に出ない。他のものに置き換える、白黒つかない、どこまでが本心でどこからが仮面かはっきりしない。全部が「彼女」なのだ。境界のない主人公をやらせたら、イザベルほど鮮やかに演じる女優はいない。水の底にたたえている潜在意識が、あるときすっと水面に浮かび上がる。彼らはみな同一人物であり、まやかしでもごまかしでもなく、それどころかすれすれのところまで自分自身であろうとしたら、限りなく複雑・多面的になるだけだ▼ポール・バーホーベン監督には、高尚な形而上学的根拠は欲望の前に無力だ、とでもいいたい確固たる信念があり、目に見えない意識下のものを引きずり出した映画で傑作を撮っています。「氷の微笑」「インビジブル」あるいは「ロボコップ」「ショーガール」「ブラックブック」にもそれは当てはまる。本作なんかそのものズバリ、ヒロイン、ミシェル(イザベル・ユペール)は風のように、あるシーンからあるシーンへ移動する。自分をレイプした犯人には心当たりがある。最初の襲撃のときは見逃したが、次はそうはいかせない。ミシェルは警察にも通報せず、催涙スプレーや手斧など、どこででも手に入る簡単な武器だけで再度の襲撃に備える。きっと来る。犯人はメールで「年の割には締まりがいい」とか「クリーム色の服がいいね。精液が目立たない」とか、ミシェルの日常をきちんと把握できる位置にいる。職場の部下か(彼女がゲームソフト会社の社長)。社員の一人に部下全員のパソコンの中身を洗い出させるが、犯人ほど根拠のある情報を握っているやつはいない。ミシェルは慌てず虎視眈々と待ち構える▼彼女には強いトラウマと抑圧がある。父親は連続殺人事件の容疑者として逮捕され、服役中だ。母親は保釈が近いから一度でも「父さんに面会に行って。どれほど憎めば気がすむの」と頼むが、娘は「二度と会いたくない」「父さんは普通の人間よ」「モンスターでもある」。39年前ナントの住宅街で犠牲者27人の残酷な事件が起きフランス中が衝撃を受けた。犯人はミシェルの父とされたが結論の出なまま現在に至り、敬虔でやさしい父親がなぜ大量殺人に走ったか、未解決のまま風化されようとしている。当時10歳だったミシェルはマスコミの餌食となり警察は無力だった。嫌悪すべき記憶が今なおこびりついているが、異常なほど父親を排斥し憎悪するのは、多分性的虐待でしょう。