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特集「ディーバ16」

2018年4月6日

特集「ディーバ16」イザベル・ユペール⑥
愛・アマチュア(1994年 恋愛映画)

監督 ハル・ハートリー

出演 イザベル・ユペール/マーティン・ドノヴァン/エリナ・レーヴェンソン

シネマ365日 No.2441

「まとも」なイザベル 

ディーバ16

イザベル・ユペールが41歳でした。インディペンデント界で注目されるハル・ハートリーと組んだ作品。セリフは英語ですが。役名もイザベル。修道院を出てポルノ雑誌に小説を書いているが、編集長は「君、もう少し悶えるような書き方が必要だよ」と苦言を呈する。それもそのはず、15年間修道院にいて、彼女は男を知らないのである。「これは詩だ」。詩だと言われるところがイザベルに当たっている。とんがった細い鼻、彼女は特に奥目ですが、木暗い部屋に鬼火が燃えているような感じ…にならないのは、青い綺麗な瞳のせいです。じ〜と見つめられると何を考えているかわからない表情になる。細い小柄な体躯。歩き方も覚束なげで、大女優にふさわしい堂々たる闊歩にはほど遠い▼そのイザベルが喫茶店で小説を書いている。コーヒーのお代わりを頼むと「いい加減に出て行ってよ。コーヒー一杯で何時間粘るのよ!」ウェイトレスに剣突を食らうが負けていない。「午前中に一杯、午後に一杯。今日はマフィンも頼んだわ」。そこへ首から血を流している男が入ってくる。イザベルが「手当てしなくちゃ」。男は記憶喪失で自分の名前もわからない。イザベルは部屋に連れてきて泊まってもいいという。この男が何者かをめぐって映画は展開します。かいつまんでいうと、彼の名はトーマス。国際的な犯罪組織と関わりがあり、政界との癒着を暴露するフロッピーをネタに組織をゆすろうとし、命を狙われている。記憶喪失になったのはソフィアに窓から突き落とされたからだ。トーマスはソフィアに12歳のときからポルノ女優をやらし、暴力を振るってきた男。悪夢のようなこの男を殺して人生をやり直そうと、ソフィアはアパートの二階から突き落とした。イザベルはトーマスとなんとなく気があい、記憶を取り戻すのを手伝う▼トーマスは自分が何者か最後までわからず苦しむ。ソフィアはイザベルに彼の素性を全て打ち明ける。トーマスは警察が追跡中の男と間違われ、発砲されて死ぬ。この男を知っているかと刑事に質問され「ええ、よく知っています」とイザベルは答える。世間のことを何も知らなかったイザベルが、社会に出て、書けるはずもないポルノ小説で身すぎ世すぎをし、男に関心を持ち、娑婆世界のなんたるかの洗礼を受け…かける。そこで映画はエンドになります。しかし、どういう身分や立場になったからといって、それで何がわかるわけでもない。悲しみは終わらないし幸福感も喜びもすぐ消える。みな一生、人生のアマチュアだ。はかなげなイザベルだが、ポルノ作家か詩人として自立するかもしれないし、トーマスを主人公にベストセラーを書くかもしれない。そう思わせるのは彼女のインサイトを思わせるに充分な知性的な容貌によるところが大きい。いっときますが、本作のイザベル(役名)は、ユペールが、それまで演じた「ボヴァリー夫人」や「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇」、「ピアニスト」などの、境界を踏み越えた女に比べたら、かなりまともですよ。