女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2018年4月19日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督2」①
ありがとう、トニ・エルドマン(上)(2017年 家族映画)

監督 マーレン・アーデ

出演 ペーター・ジモニシェック/ザンドラ・ヒュラー

シネマ365日 No.2454

お前が心配なのだよ 

特集_頑張るドイツ映画と女性監督

ドイツ映画というのが物足りなく、狭く感じるほど、世界的なデビューを飾ったマーレン・アーデ監督。ドイツでも女性監督の層が厚くなってきましたね。ハリウッドでは引退表明していたジャック・ニコルソンが、本作に感動のあまりトニ・エルドマン役でスクリーンに復帰するそうです。監督自身が言っているように、本作は解釈を強制する映画とは違うし、判断を押し付けてもいない。元音楽教師のヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)愛犬が死に、寂しくなってブカレストにいる娘のイネス(ザンドラ・ヒュラー)を訪ねる。彼女は大手コンサル会社のキャリア、バリバリの女子だ。いきなり会社にやってきた父親に娘は戸惑う。大事な顧客との接待もあり…と思うが、どうしてなかなか、父親の血をしっかり受け継いだ「おふざけ」好きであることがわかってくる。硬質な容貌のザンドラがにこりともせず、トニ・エルドマンに変装した父親を、セレブ社交界で「ドイツ大使です」と紹介するなんて、ジョーク最高よ▼父親は悪ふざけが好きだ。子供の頃から父の冗談に、笑わせられたり怒らされたりしてきた娘は、ラフな普段着の父をパーティに連れていく。「いいのか」と気にする父に「いいのよ」と一言。困った父だが彼女は好きだ。久しぶりに実家に帰っても娘はケータイばかり。会社の話はしたがらない。恋人もいそうにない。上海に開設する支店の責任者で栄転するらしいがそれさえクールだ。父親は笑顔も見せない娘が心配になり、ドイツからやってきた。数日観光などして帰国した。やれやれ、ホッとしたとたん、娘のいく先々で、ある時はビジネスエリート、ある時は外交官、ある時はコンサルタントにしてコーチングの名人と、あらま、無敵の「トニ・エルドマン」が出没するのだ。トニは詐欺師でもなんでもなく話し相手になっているだけだが、娘が父譲りの悪ノリで場をつなぐものだから、すっかりその気になってしまうのだ▼「お前が心配なのだよ」と父は言う。仕事に追いまくられる娘と彼女を取りまく業務第一主義の環境に「イネス、ここにいて幸せか。生き生きと暮らしているか。楽しいこともやってごらん」。娘は逆に訊く。「パパにとって生きる意味はなに?」。遅くまで接待して寝すぎた娘は「なぜ起こしてくれないの。着信4回。約束をすっぽかしたわ!」父「お前は元気だと言っているが、本当にそうなのか」怒りまくっている娘「空から飛び降りるかもね! パパには止められないわ!」。しかしイネスも自分がひとつも生活を楽しんでいないことがわかっていた。一度踏み入れたベルト・コンベアは止まってくれない。おもちゃの入れ歯とカツラでどこにでも現れるパパは、招かれたパーティの席で久しぶりにピアノを弾き娘に歌えと促した。最初はウジウジしていたイネスだが、ピアノにつられ小さく歌い出した。これがホイットニー・ヒューストンの代表曲「グレイテスト・ラヴ・オール」です▼イネスは次第に感情がこもり、高々と歌い上げる。「あなたが夢見ていた場所が、寂しい場所になってしまったら、愛があなたを力づけてくれる」今のイネスそのままです。「誰かを当てにしないって決めた、うまくゆこうと行くまいと、自分の信じるままに生きたいの」。このあとイネスはぎょっとする行動に出ます。同僚・上司を呼んだ自分の誕生パーティをヌーディスト・パーティにしてしまうのです。そこへやってきた巨大な「クケリ」の着ぐるみ。もちろんパパです(クケリとはゴリラの毛を長くしたような、ブルガリアの精霊)。