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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2018年4月28日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督2」⑩
愛より強く(2006年 恋愛映画)

監督 ファティ・アキン

出演 ビロル・ユーネル/シベル・ケキリ

シネマ365日 No.2463

わからんよ、悪いけど

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妻を失った男ジャイト(ピロル・ユーネル)と家族から逃げたかった女シベル(シベル・ケキリ)が偽装結婚する。戒律の厳しい親の家から出るのは結婚しかないと女が言う。「自由に生きたいの。男と踊ったりセックスしたり。寝室は別。セックスなし。料理・買い物・掃除は私がやる。あなたはトルコ系だから親も認める」。男が断ると目の前で女はビール瓶を割り、手首を切る。男は慌てて了承する。男はやがて女を愛するようになり、女に言い寄る男を殺して刑務所行き。女は男への愛に気がつき「待っている」と言って、従姉のいる故郷イスタンブールに帰り、ホテルの雑役をやる。しかし男のいない寂しさから酒とドラッグに溺れ、行きずりの男たちに半殺しにされ路上に捨てられる。数年後、男は出所、女を追ってイスタンブールに。女は結婚し子供をもうけ、平穏に暮らしていた。男は女に自分の故郷へ行こう、明日のバスに乗ろうと口説く。女は発車時刻を聞く。バス停で男は待つ。女は来ない。男を乗せたバスが出て行く、という粗筋だ▼ファティ・アキン監督の自家薬籠中とも言えるトルコとドイツを往還する作品の第一作。続く「そして、私たちは愛に帰る」も「ソウル・キッチン」も佳品でした。本作もいいですよ。いいのだけど、どうも主人公ふたりに共感しにくいのよ。まず男ジャイトが豚小屋みたいに散らかした汚い部屋に住んでいる。無精髭はカミソリを当てたこともない。汗くさい(と思う)シャツ。そのせいか室内では素っ裸。台所の流しには汚れた食器、コップが山盛り。足の踏み場もない。シベルが来て貯金をはたき、家具・インテリアを新調し、人間らしい部屋にする。彼女は外で一夜限りの関係を楽しむ。美容院で仕事も得た。確かに彼女の家では父親が威張り散らし、娘が言うことを聞かないのは「お前のしつけが悪いからだ」と母親に当たる。兄は妹が男と手をつないだだけで殴る。家も出たくなるだろうが、彼女の自己主張は腕に無数のリストカット、つまり自殺未遂だ▼男はすぐに興奮し、酒場で暴れる。ドラッグでハイになり、都合のいいときに元恋人とセックスする。シベルを好きになってきたがうまく付き合えない。人間関係が結べない。シベルは男が刑務所から出てくるまで、従姉セルマの元に身を寄せる。セルマは一流ホテルの責任者であり、さらにステップアップを目指している。シベルは男への手紙にこう書く「前はセルマを尊敬していたけど、今は軽蔑する」そしてセルマとの同居を嫌がり友だちの家に引っ越す。「行かないで」と止めるセルマに「あなたみたいに生きるの? 働いて寝てまた働く。旦那が逃げるはずよ」なんと態度の悪い女だろう。セルマはそれでも絶交せずに付き合い、出所して追いかけてきた男に「シベルは恋人と娘がいて幸せに暮らしている。あなたを必要としていない」と引導を渡すが、男は「君に何がわかる。彼女が人生に現れ愛と生きる力をくれた。わかるか。俺の思いが!」相変わらず興奮して怒鳴り立てる。わからんよ、悪いけど。セルマが静かに訊く「彼女の人生を破滅させても?」「…それはできない」と引きながら、再会したら出奔を持ちかけるのだ。シベルはバス停に行かなかった。行っていたらドタバタね。しっかりしてよ、ジャイト。愛に名を借りた依存心もあるってことに気がついたら、まずは一人で再出発することね。