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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2018年4月29日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督2」⑪
東ベルリンから来た女(上)(2013年 社会派映画)

監督 クリスティアン・ペツォールト

出演 ニーナ・ホス/ロナルト・ツェアフェルト

シネマ365日 No.2464

女医バルバラ

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なぜヒロイン、バルバラ=原題=(ニーナ・ホス)は、渇望していた西への密出国を土壇場で放棄し、東ベルリンに残る事を選んだか、ですね。西側への出国を申請したため、バルバラは大病院から田舎町トルガウの病院に左遷される。恋人ヨルクのいる西側へ、いずれ脱出する計画がある。だからあえて人間関係を結ばず孤立した日常で彼女は診察に当たる。先輩医師のアンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)が彼女に好意を持つが無視し続ける。彼女の身辺は秘密警察の監視下にあり、数時間官舎を留守にしただけで身ぐるみ、検査される。それでも隙をついてヨルクとの密会と脱出資金の受け渡し、落ち合う場所の打ち合わせなど、静かな生活の内側に波乱を秘める。スリリングな展開です。バルバラが自転車で野道を走り、強い風が木立のざわめきをかきたてる。暗い夜道に佇む「菩提樹」の嵐を想起させるような風の音です▼周囲の冷たい視線は受け流すが、患者には献身的だ。強制施設から脱走した少女ステラが運び込まれた。バルバラは髄膜炎の疑いを指摘し、適切な検査と処置をとる。彼女は妊娠していた。「大変なことになるわ」。バルバラは誰の診断も拒否した少女に付き添うが、施設に連れ戻される日、「バルバラ」と呼んで泣き叫ぶ少女を抱きしめるが、それ以上何もできなかった▼密出国の手はずが整った。アンドレに乞われ、開頭手術の麻酔を受け持った日に当たった。医師として誠実なアンドレにバルバラの気持ちは傾いたものの、やはりヨルクとの西側での人生を選ぶ。逃避行に出る寸前、ボロボロのステラが部屋に来る。この時点でバルバラはステラを逃すこと、自分が残ることを決意したと思うのです。バルバラは自由を拘束され、屈辱的な扱いを受ける東側を毛嫌いしていた。病院勤務も嫌なことばかりだ、とヨルクに漏らした。彼は「それももう終わりだ。西へ戻れば働くなくてもいい、僕の収入で充分だ」と安心させる。これがまたバルバラには引っかかった。バルバラは仕事が嫌で辛いといったのではない、彼女は有能な医師なのに、国の体制が彼女の仕事を邪魔していたからです。「この国にいたくない」と訴えたステラの気持ちがよくわかった。医師でさえ、ステラは札付きの問題児で、病気は芝居だよと悪く言うのに、バルバラは耳も貸さず症状を見てとり、診断を下すシーンはカッコよかったわ。ニーナ・ホスは「ブラッディ・パーティ」でヴァンパイアのボス、「素粒子」では育児放棄する奔放な母親、「あの日のように抱きしめて」は自分を陥れた夫を、土壇場で逆転する妻を演じました。金髪・碧眼・長身の、代表的ゲルマン美人です。相手役のロナルト・ツェアフェルトは「アイヒマンを追え」で、主人公の検事長の部下に扮しました。本作でも温顔で物腰穏やかな、密かにバルバラに思いを寄せる医師を好演します。最初の設問に戻ります。なぜバルバラは残ることにしたのか。ステラを逃す、それもありましたが、それだけじゃないと思える。