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特集「ザ・クラシックス」

2018年5月6日

特集「ザ・クラシックス6」①
悪人と美女(1953年 社会派映画)

監督 ヴィンセント・ミネリ

出演 カーク・ダグラス/ラナ・ターナー

シネマ365日 No.2471

このオファ、受けます?

特集「ザ・クラシックス6」

ハリウッド内幕ものです。「サンセット大通り」「イヴの総て」など、このジャンルには傑作が多いですね。手の内を知っているだけに、作るほうも見るほうも感情移入しやすいのかも。誰が悪人で誰が美女と固定されていません。ハリウッドとはかくも各種各様、悪人あり美女あり、混淆した世界だと思うのがアタリのようです。映画作りに総てをかけるやり手のプロデューサー、ジョナサン(カーク・ダグラス)。父が有名な俳優でコンプレックスのために力を出し切れず酒に逃避する女優ジョージア(ラナ・ターナー)。ジョナサンと一緒に情熱を持って映画作りに乗り出したが、初めてのチャンスをジョナサンに握りつぶされた監督アミエル。脚本家ジェームズはジョナサンに脚本を依頼され、別荘に缶詰になって執筆している間に妻が飛行機事故で死んだ。のちにジョナサンが「まとわりつく君の妻は仕事のジャマになる」といって、飛行機に乗せて遠ざけようとしたゆえだとわかる▼だから三人とも恨み骨髄だ。二度とあいつとは仕事しないと誓っている。そこへジョナサンが2年ぶりに映画を作るから、監督・主演・脚本を三人に頼みたいとプロデューサーのハリーを通じて申し込まれる。三人の回想で映画は進みます。ジョナサンに裏切られたというが、ジョナサンは理由を言っています。アミエルには「はっきり言って君にはこの大作は荷が重い」。ジョナサンを愛するジョージアには「僕が欲しかったのはスターだ。個人的な感情は関係ない」。ジェームズには「ローズマリー(妻)は騒々しく君の執筆は中断されてばかりだったからしばらく離れてもらった」。結果、どうなったか。ジョナサンの仕打ちに奮起したアミエルは監督としてアカデミー賞を二度取り、ジョージアは常に人気女優のベストテンで10位以内に入る。ジョームズはピューリッツァー賞を取り、今や押しも押されぬ脚本家だ▼彼らが世に出たきっかけはジョナサンの冷たい仕打ちだった。こう言う人っていますよね。煮えくり返るほど腹がたつが、現在の自分の基盤は紛れもなくあの男にある。彼の厳しさが本当の仕事を教えてくれた。カーク・ダグラスが、仕上がりに不満があれば自分の監督作品でもオクラ入りさせる、妥協のない映画人を演じます。彼が演じるのは、ローマ時代の奴隷であれ、ボクサーであれ、金庫破りであれ、ガンマンであれ、志の強い男。ジョージアの出演映画が大成功を収め、パーティの席をジョナサンは帰ってしまう。パーティに戻ろうと迎えに来たジョージアに「一本撮った後は落ち込むんだ。一人にしてくれ」と頼む。仕事のことを今は考えたくない。どこまでも深くひたすら沈んでいきたい。情熱の燃えカスになった状態を演じてうまかった。夫を邪魔する妻ローズマリーのグロリア・グレアムは本作でアカデミー助演女優賞を撮りました。ラナ・ターナーは結婚歴8度。エリザベス・テイラーと並びます。1946年の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(劇場未公開)で、愛人をそそのかして夫を殺させる悪女を演じて脚光を浴びました。女優と悪役のいい映画はそれだけでほぼ成功です。本作でも、本来ならジョナサンを恨む筋合いではないのに、絶望のあまり車を暴走させ、怨念のかたまりになった無念の表情なんか、よかったですよ。ジョナサンの仕事の依頼を受けるかどうするか、三人が電話口でジョナサンの声に耳を済ましているところでエンド。受けます? 受けないほうがいいと思うね。どんなに評価に値する男だとしても、立ち直ったのは酷な仕打ちにも負けず、三者三様、自分が頑張ったからでしょ。成功も失敗も自分のせいよ。カリスマ男の幻想を過大視してはいけないわ。