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特集「ザ・クラシックス」

2018年5月8日

特集「ザ・クラシックス6」③
カラスの飼育(1987年 家族映画)

監督 カルロス・サウラ

出演 アナ・トレント/ジェラルディン・チャップリン

シネマ365日 No.2473

ママはそばにいる

特集「ザ・クラシックス6」

かなわんなあ、こんなクソガキが家にいたら。アナ(アナ・トレント)は9歳、母親が残した「秘密の缶」に入った白い粉を毒薬だと信じ、殺したい大人に飲ませるのだ。それが重曹だからいいようなものだけど、車椅子の祖母に「おばあちゃん、死にたいのね。手伝ってあげようか」。相性のよくない叔母には「死んじゃえ!」。かくれんぼして見つかった者はその場で倒れ「死ぬ」。アナの可愛がっていたネズミのペットも死んだ。父は愛人と情事の夜腹上死する(アナは父のコップに白い粉を混ぜたのでそのせいで死んだと思っている)。母はガンの辛い闘病のすえに亡くなった。この映画には至るところに死のシーンがはめ込まれ、成長したアナが「決して幸福な子供時代ではなかった」と振り返っているのは無理ない▼アナは母親を幻想の中で生き返らせる。母はお話をして寝かせてくれ、何度もアナにキスして抱きしめてくれる。それと同時に激痛に耐えかねた母がベッドの上で転々とし「死なせて、私を死なせて」と叫んでいた姿がよみがえる。母とはアナにとって愛と死の一体化だ。叔母は母の妹だ。しつけにやかましい。誰彼構わず女に手を出していた父親、悲しみのうちに狂気の一歩手前で死んだ母、彼らの異常性に比べると叔母は公序良俗の規範であり、姉の忘れ形見を、どこに出しても恥ずかしくない娘に育てねばと…つまりマトモな女性なのである。アナが「私、死にたい、死んじゃいたい」と嘆くと「そんなこと、言わないの」とやさしくたしなめる叔母に「叔母ちゃまなんか、死んじゃえ」というのだから叔母さんもたまったものではない。「カラスの飼育」とは、カラスを育てて目をくり抜かれないよう、気をつけろ、というスペインのことわざらしい。飼い犬に手を噛まれないようにしろ、とでもいうのか。ならばこの映画では、アナに殺されないようにしろ、ということか▼長い夏休みがやっと終わり、休みの間じゅう、家で娘たちの世話に縛り付けられていた叔母さんは、どこの国でも同じだろうけど、やれやれだ。学校に行きたくない、もっと寝ていたい、と渋る娘たちの尻を叩くのは、彼女らを取り上げた長年の家政婦、ロサだ。バスに乗り遅れまいと、三人そろってバス停に走っていく俯瞰シーンでエンド。この映画、悲劇でもサスペンスでもないのである。子供の残酷さを際立たせたかったのかもしれないけど、モロ作り話で白ける。アナ・トレントは作中人物を演じるのに心理的な無理が高じて、撮影中ウツになってしまったそうだ。かわいそうに。例によって、というか、やはりというか、本作はカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した。カンヌの傑作ってストレスが多い。二度見はノー・サンキューだわ。高尚な映画が好きな人、どうぞ。