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特集「ザ・クラシックス」

2018年5月11日

特集「ザ・クラシックス6」⑥
悪徳の栄え(1963年 文芸映画)

監督 ロジェ・ヴァデム

出演 カトリーヌ・ドヌーブ/アニー・ジラルド

シネマ365日 No.2476

ああ、すごい人

特集「ザ・クラシックス6」

冒頭、字幕にこう出る。「美徳と悪徳を描くには人間の情動が極みに達した時代に設定すべきだと考え、1944〜1945年という時代を選んだ。ロジェ・ヴァデム」。サド侯爵の「ジュリエット悪徳の栄え」「ジュスティーヌ美徳の栄え」が原作だけれど、ロジェ・ヴァデムが大幅に変え、サド侯爵のリベラルな思弁的な内容とはほとんど関係ありません。カトリーヌ・ドヌーブは19歳。ヴァデムはドヌーブを撮るためにこの映画を作ったようなものです。ジュスティーヌの姉、ジュリエットがアニー・ジラルド。ルキノ・ヴィスコンティ監督「若者のすべて」の、アラン・ドロンと愛し合う哀切な娼婦を演じ国際的に認められました。本作の時代1944年〜45年とは第二次世界大戦終結前後です。姉妹の関係をジュリエットがこう要約します「二人の仲のいい姉妹がいて、姉は家族のために体を売り、肉を買った。あらゆる男と寝た。ドイツ軍がパリを占領し、1年で将軍の愛人になった。その間妹はママと一緒。レジスタンスに挺身する恋人とパリ解放を願う。そんなとき恋人が逮捕。妹は姉に、将軍を頼って恋人を釈放して欲しいという。私はドイツ軍が好きなの。私まで苦労するのは嫌よ」姉妹の立場は敵味方に別れました▼でもこういう事情さえ本作では味付け程度。テンポも遅く、くだくだとまだるっこい。あっさりいうとジュリエットはドイツ軍の近衛隊長の残酷な拷問や冷酷な処置をまざまざと見ながら、彼の残虐性に惹かれていく。妹ジュスティーヌは数人の女たちと一緒に捉えられ、騎士館という城に連れて行かれる。そこはナチ将校たちの異常性愛の秘密の場所…なのですが、具体的なサドマゾシーンはなく、ギラギラした目で将校らが女たちを見る、という程度です。女たちは命令に絶対服従が館の掟だ。男たちを喜ばせることに、少しでも不服を示すと「矯正」という拷問を受ける。両手を壁に鎖で繋がれ、一晩放置されるのは序の口だ。ジュリエットは半年間なぐさみものになる▼戦争は末期に近づいた。ヒトラーは自殺しパリは解放された。館の将校たちは我さきに制服を脱ぎ、農夫の出で立ちに変わり、館のめぼしい家具調度をかっぱらい車に詰め込んで逃げる。親衛隊長とスイスに脱出するべく、館に来た姉は妹を見つける。一緒に逃げようというが、妹は「いやよ。ワルならワルらしく、最後までワルでいることよ」と姉の手を振り払う。親衛隊長はジュスティーヌを道づれに毒を仰ぐ。連合軍によって館は解放、ジュリエットは自由の身となる。三島由紀夫がサドの著作を絶賛したらしいけど、あの人本質的に女嫌いですからね。でも本作に限っていえば、妹の考え方はエゴイスティックだし、汚れた人生を開き直って生きる姉に「悪徳の栄え」を体現させるのかと思えば、全く尻すぼみ。「悪徳」の凄みがこの映画のどこにもないのよ。ドヌーブが陵辱されて無表情に流す涙、一目でワセリンだとわかるわよ。おもちゃみたいな映画を作る監督の子をドヌーブは19歳で産み、その後ヴァデムはジェーン・フォンダに走った。ドヌーブ以前の愛人はB.Bことブリジット・バルドーだった。この監督は余人の理解を超えた大監督だったに違いない。どう見ても首をかしげる映画を作ったヴァデムに、花の盛りの女優が三人、入れあげたことは映画裏面史の奇観というしかない。ああ、すごい人。