女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ザ・クラシックス」

2018年5月9日

特集「ザ・クラシックス6」④
カーサ・エスペランサ(2004年 社会派映画)

監督 ジョン・セイルズ

出演 マーシャ・ゲイ・ハーデン/リリ・テイラー/リタ・モレノ

シネマ365日 No.2474

行くわよ、幸せにね

特集「ザ・クラシックス6」

この女性たちはここで何をしているのだろう、といぶかるシーンから始まります。場所は南米のリゾート地のホテル。ほぼ30代〜40代の女性たち6人。彼女らは地元の人が「赤ちゃんの家」と呼ぶ、聖マルタ園の孤児たちと養子縁組が整うのを待っています。滞在期間が数週間に及ぶうち、お互いの気心が知れて親しくおしゃべりしている。彼女たちのホテルの支配人ムツノ夫人がリタ・モレノです。「ウェスト・サイド物語」から42年、ダンスで鍛えた容姿は衰えを見せず、ピンと伸びた背筋で「養子を探しに来る女たちは世話がやけるわね」とブツブツ言っている。「女たち」の背景はそれぞれ複雑でした。スキッパーは流産3回という辛い経験をし、養子をもらうことを決めた。一日中、フィットネスに打ち込み、悲しみを忘れようとしている▼レズリー(リリー・テイラー)はみなとあまり打ち解けないが、悪口の誘いにも乗らない。子供を産もうと思えば産めるが、男性と接触しようとしない。ジェニファーは裕福な家庭の主婦。不妊治療の甲斐がなく、米国にいる夫との間に、ケータイで口論が絶えない。ナンシー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は口うるさく、いつもイライラを募らせている。お金に困っていないのに盗癖がある。ゲイルはアルコール依存症から立ち直り、母親としての資格ができたと思う。そして養子を求めてここへ来た。アイリーンはアイルランド出身でボストン在住。貧しいがお金を工面して「聖マルタ園」に来た。それというのも、子沢山の大家族の中で自分だけ子供がいないストレスに押しつぶされそうなのだ。表通りのホテルを一歩離れると、観光客のふところを狙うストリートチルドレン、うらぶれたれ劣悪な住宅が並ぶ町、おびただしい貧富の差、不安定な政情、監督はまるでどこにいっても幸せに縁のない場所で、彼女らは「希望」(エスペランサ)を見つけることができるのか、重苦しい問いを投げかけてくる▼6人の女性に共通するのは、子供がいないことが女としての敗北感につながっていることだ。だから養子を得ることは、彼女らの人生の希望を見出すことだった。もう一人、ホテルのメイド少女アスンシオンがいる。少女だ。彼女が掃除に入ったアイリーンの部屋でかわす会話が胸を打つ。この映画の中枢だと思える。「養子が決まったら私の娘ね…初めて言ったわ。私の娘」どんな子をもらうかわからない。でも彼女の思い描く夢に耳を傾けた。「ボストンの冬は厳しいの。冬の初めは雪の季節。雪が降ると学校は休みになる。ゆっくり寝かせられるわ。私は言う。可愛い子、ゆっくり寝なさい、歯を磨く時間だけど今日は大目に見てあげる。私はココアを作り、マシュマロを浮かべる。何をするか二人で話すの。私は娘に重ね着させる。あの子の着替えを手伝うのが私の夢なの。私は娘の支えだと実感しながら。ファミレスに行ってクラスメイトや娘の作り話を聞くの。周りは親子連ればかり。私もその一人よ」…その一人であることが誇らしい▼黙って聞いていたアスンシオンが話しかける。「私は北に娘がいます。エスメラルダといいます。9歳になるわ。雪の降る所に住んでいるかもしれない。私も若かった。弟妹がいて世話しながら仕事をした。修道女がやってきて養子に出すのが一番だと。母親希望のグループがホテルに来るたび、自分の子の養母になった人を想像する。あなたのような人だといいけど」…長々とこの会話を書いたのは、次に生まれる子が娘だとわかった時の、自分の母の気持ちが想像できたからだ。母は娘が欲しかった。生まれたら何を着せよう、夏は、冬は。好きな食べ物は何になるだろう、それを作ってあげよう、二人で何を話そう…戦争みたいな子育ての数年があるとわかっていても、母は思い描けたのだ。そのあとに続く、アスンシオンの身の上には胸が詰まった▼ナンシーとアイリーンの養子が決まった。ベッドから赤ん坊を抱き上げた看護師が「これであなたの人生が変わるのね」あやしながら「行くわよ。幸せにね」言いながら部屋を出て行く。そこで映画は終わる。果たして養子を得た6人の女性の身の上にどんなことが起こるかわからない。でもエスペランサが与えようとしているものに、やはり私も「行くわよ、幸せにね」という言葉以外、思い当たらないのだ。