女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2018年5月13日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力7」②
ウィッチ(上)(2017年 ホラー映画)

監督 ロバート・エガース

出演 アニャ・テイラー=ジョイ

シネマ365日 No.2478

心の隙間に打つくさび

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力7」

悪魔は実在する、悪魔に取り憑かれた女性が魔女であるから、ゆえに魔女も実在する、そういう軸足でこの映画はできています。だから常識とか科学的な分析は通用しない、黒い羊は悪魔の分身であり、人間の言葉を理解し、喋り、行動を支配する。悪魔の棲む場所は深い森であり、ときにはウサギに変身して待ち伏せし、若い美女に姿を変えて少年を誘惑し狂気に陥れ、命を奪う。悪魔の支配術は人間の心の隙間に黒いくさびを打ち、呼び起こす不信であり、疑いであり、恐怖である。家族の誰かー本作の場合長女のトマシン(アニャ・テイラー=ジョイ)が魔女であるという疑惑を母親と父親に植え付け、彼女を信頼する弟を血祭りにあげ邪魔者を取り除き、もともと性格のよくない双子の姉弟を使嗾して家族を離反させ崩壊に導く▼監督は話を無理に面白くさせようとせず、ドキュメンタリーのように現象を積み上げていき、こういうことが事実としてあるのだ、と突き放します。出演者たちはみな好演です。特にこのとき17歳だったアニャ・テイラー=ジョイは、自分にかかった魔女の疑いを悲しみますが、たとえ父親であれ、母親であれ、娘を信頼しない親のほうが間違っている、と対決姿勢を明らかにし、父親にこういいます。「私を追い出すって父さんと母さんが話しているのを聞いた。銀のコップを盗んだのは私だと母さんに責められているときも黙っていた。妻に頭が上がらず作物の栽培も狩りも満足にできない男よ。娘の話を信じない。双子に訊けばどう? 二人はヤギと話せるわ。悪魔はヤギに姿を変えて言葉をささやくのでしょう? 双子たちは黒ヤギがルシファー(堕天使)だと知っている。彼らこそが魔女よ。黒ヤギに変身した悪魔と契約したのよ」▼一家はもともと信心深い教会の信徒でしたが、聖書の解釈が原因で父親は激しく異議申立を行い、教会側と対立、「入植地を去れ」「望むところだ」と、妻ケイト、長女のトマシン、長男のケイレブ、双子の姉弟を連れ、村を出たのです。末っ子の赤ん坊のサムをあやしているとき、トマシンがふと脇見しているときにサムがいなくなった。父親は「オオカミが連れていったのだ」といい、母親は錯乱し、トマシンのせいだと責めます。母親は荒れ地を開墾するつらい作業と育児に疲れていた。父親は獣を捉える罠と母親の銀のコップを交換するが黙っていた。息子はしっかり者で賢く、唯一頼りになる少年だが、両親が姉を奉公に出すというのを聞き、貧乏だからそんなことをしなくてはいけないのだ、僕が姉さんをどこにもやらない、と獣を取る罠を仕掛けに行き行方不明になります▼舞台は1630年代のニューイングランドです。美しい自然環境ですが本作の自然、特に森は美しいというより、魔物が住むのにふさわしい闇の世界です。いつの間にか森の奥に入り込んでいたケイレブは途方に暮れていると、赤いショールの女が現れ、少年の頬に手を当てキスしました。数日後ケイレブは帰ってきましたが全裸で、正気を失っています。双子は「トマシンが呪ったのだ」と姉を窮地に陥れます。母親はこの土地が嫌いだ、イングランドに帰りたい、と弱音を吐く。ケイレブが息を引き取り母親は絶叫。トマシンに家を出て行けといいます。ちょっとひどいですよね。