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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2018年5月17日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力7」⑥
怪物はささやく(2017年 ファンタジー映画)

監督 ファン・アントニオ・バヨナ

出演 シガニー・ウィーバー/フェリシティ・ジョーンズ/リーアム・ニーソン(声)

シネマ365日 No.2482

学ばなきゃ

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力7」

母親は不治の病だ、遠からず死ぬ、少年コナーはそれが怖くてたまらない、母親を失うつらさ、恐怖と寂しさがコナーについ「もう終わりにしてくれ」と思わせる。母親を死なせてくれと。それが罪悪感として少年につきまとって離れなかった。毎晩のように悪夢を見るようになる。崖の上で少年は母親の手を握っている。母親は絶壁に宙ぶらりん。コナーは母親の手を離すまいとするのだが、心のどこかに住み着いた(もう終わりにしてくれ)という思いが彼を追い詰め、母親の手を離してしまう。そこで目が覚める。自分は母の死を望んだのだ、いや今も望んでいるのだ…少年に限らず、思い病人を世話することに疲れた介護人はよく同じ思いになり、介護殺人などの悲しい事件が起こります。コナー少年は大人というにはまだまだだけれど、少年というよりもっと強い、自意識が発達している年頃なのでしょうね▼心に住み着いた「悪」が「怪物」(声=ニーアム・リーソン)を呼び出す。それは真夜中の12時7分になると、窓の外に巨大な樹木の姿となって現れる。怪物との対話は、余命わずかとなった母エリザベス(フェリシティ・ジョーンズ)と暮らす、孤独な少年の自問自答です。それが美しいファンタジーとなって、愛が時として与える過酷な現実、善悪どちらをも生みだす人の心の複雑さ、人生が与える試練もあれば、そのときこそ支え合う共存の努力が要る、そんなことを学びます。母親は息子に最悪の事態を悟らせないようにするのですが、息子のほうが敏感に感じ取っている。そして母親のそばを離れまいとしますが、そのたびに母の手を離した自分が許せない。怪物は毎晩やってきてコナーに話をする。一つは婚約者を殺した罪を義理の母・王妃になすりつけ、王位を継いだ王子。冤罪で殺されるはずだった王妃を「怪物」は助け、海辺の平穏な人生を与えた。王となった王子は統治し職責を果たした。「王妃は魔女だったが人殺しではなかった。王子は彼なりに善政を敷いた。世の中には善人と悪人がいるわけではない。たいていは中間さ」▼コナーには祖母クレイトン夫人(シガニー・ウィーバー)がいる。コナーは厳しいおばあちゃんが嫌いだ。おばあちゃんを帰してくれと怪物に頼むと「おばあちゃんは味方だ」と言って取り合わない。コナーが自分自身の夢の話をする番になった。彼は「怪物」に大声で叫ぶ。「僕がママの手を離した。僕が死なせた、治らないことは知っていた、ママの死を待つのが辛くて、もう終わりにしたかったんだ!」逃げよう、隠そうとしていた自分の真実の姿を認めることによって、コナーはトラウマを乗り越える。「怪物」は少年にいう。「人殺しの王子は国民に愛された。薬の調合師は嫌な奴だが正しい。誰にも認められなかった透明人間は注目されようとして、より孤独になった。人間は複雑な生き物だ。真実の辛さを和らげたくて、自分に都合のいいウソを信じる。結局は何を考えるかではなく、どう行動するかだ」▼母親の死後、少年と祖母は二人きりになって暮らしていくことになりました。シガニー・ウィーバーが矛盾ある人の心にヘノゴノ説教たれず、少年にこう言います。「お前とは気があうとは言えないわね。お互いに学ばなきゃ。でもお前とはママという共通点がある」。何て力強いおばあちゃん。ニーアムの「怪物」とシガニーのおばあちゃんで、コナーは虚無の悪夢から現実社会に復帰。ここにも悪夢はあるだろうけど「学ばなきゃ」