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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2018年5月19日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力7」⑧
虹泥棒(上)(2016年 ファンタジー映画)

監督 アレハンドロ・ホドロフスキー

出演 ピーター・オトゥール/オマー・シャリフ/クリストファー・リー

シネマ365日 No.2484

夢見る変人

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力7」

30年間オクラ入りになっていた作品です。監督がカルトの帝王、アレハンドロ・ホドロフスキー。本作のキーワードは「水」と「虹」です。ホドロフスキーという人、なんでもないところにネタを散りばめているので、世話がやけるのです。大富豪ルドルフ(クリストファー・プラマー)の甥、メレアーグラ(ピーター・オトゥール)は遺産の相続を待ちながら地下水道暮らしをしていた。地下に引っ込んだのはドロドロした親戚たちとの相続争いに巻き込まれたくなかったからだ。高齢の叔父はいずれ死ぬから、待っていればよいという、リアリストなのかファンタジストなのかわからない世捨て人男。そういえばアラビアのロレンスも、結果的に世捨て人でした。「ラ・マンチャの男」となるとセルバンテスの「夢に生き夢に果てる」人間の本質に、オトゥールという役者が(ソファ・ローレンもよかった)詩と肉体を与えた傑作でした。現実社会に正体を晒すと非常に問題がある男を、オトゥールは演じ、フィットしています。「将軍たちの夜」のサイケな将軍も北の海辺で息をひきとる、うらぶれた役者「ヴィーナス」もそうでした▼ダルメシアンを溺愛する叔父ルドルフが、そもそも人を食っています。お犬さまたちの飲み物はヴィンテージのワイン、豪華な正餐のテーブルの椅子に鎮座する何頭ものダルメシアンに山盛りのキャビア。辟易する親戚一同をルドルフは歯牙にもかけぬ。7人の娼婦を招いたランチキ騒ぎで卒中を起こし昏睡。数年間メレアーグラは下水道に引きこもり、叔父が息をひきとるのを待つ。叔父も甥も本質的に人間嫌いです。メレアーグラの世話をするのがコソ泥のディマ。これがオマー・シャリフとくるから、「ロレンスよ、再び」ですね。ディマは遺産を相続したらお前にやるという、メレアーグラの約束を当てにして、せっせとコソ泥稼業に精出し、食べ物や飲み物を運んで養う。メレアーグラは愛犬クロノスが水に流されて以来、犬のぬいぐるみに話しかけてばかりいる。ディノは街で見かけた新聞で、大富豪の叔父が死に、遺産は娼婦たちに譲られたことを知る。彼女らがいる娼館が「レインボー娼館」です。メレアーグラにはビタ一文回ってこない。ディノは犬のぬいぐるみと喋る、ごくつぶしの男に愛想をつかし、盗品のお気に入りの蓄音機を持って下水道の住処を後にしました。駅にたどり着いたディノは、嵐のため街に大洪水が起きていることをアナウンスで知ります。あのウスノロが心配だ。ディノは列車の窓から飛び降り、川のように氾濫した街中を泳ぐように、再び下水道に戻ります。なんか、ここでもロレンスとアリ酋長の友情を彷彿とさせます。