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特集「最高のビッチ」

2018年5月25日

特集「最高のビッチ6」⑤エリザベス・テイラー2
禁じられた情事の森(1967年 社会派映画)

監督 ジョン・ヒューストン

出演 エリザベス・テイラー/マーロン・ブランド

シネマ365日 No.2490

駐屯地の殺人

0521_25最高のビッチ6

エリザベス・テイラーは母性豊かな繊細で複雑な女性です。同時に飛び抜けて強くてわがままですから、ビッチを演じていい作品がいくつもあります。「秘密の儀式」「バージニア・ウルフなんかこわくない」「クレオパトラ」「ある愛のすべて」…彼女に関わると破滅する、というのが基本パターンです。本作の共演はマーロン・ブランドです。ここからして重量感ありすぎ。全体にただよう、踏み外した世界の抑圧、淫靡、逃走、幻滅。原作がカーソン・マッカラーズだからね。ジョン・ヒューストンみたいな「男の中の男」を描くことが得意な監督が、なにゆえ本作に手を出したのかわかりませんが、リズとブランドがスクリーンをわがものとしている怪演ぶりはよくわかります▼出だしの字幕がそもそも思わせぶりです。「数年前、ある南部の駐屯地で殺人を犯した者がいた。カーソン・マッカラーズ」。ヒロイン、レオノラ(エリザベス・テイラー)の夫、将校のウェルドン(マーロン・ブランド)はゲイです。駐屯地で戦略の講義を担当している。レオノラは欲求不満で、乗馬やパーティで気を紛らわしているが、底流にはいつも夫への憤りが渦巻いていて、腹いせのように隣の官舎の将校ラングドンと不倫中だ。ラングドンの妻アリソンは子供を亡くしてから精神に失調をきたし、フィリピン人の振付師アナクレトとしか話さない。もちろん夫とのふれあいはない。レオノラはパーティの席で、夫ウェルドンを乗馬のムチで叩くような振る舞いをする。怖いものなしなのだけれど、わがままで横暴な妻の心の内にある、満たされない寂しさを、リズは感じさせる。マーロン・ブランドときたら、ろくにセリフもないのに、雄牛のような頑丈な体格で、玉汗をかいてダンベルを上下させ怒ったように筋トレしている、それだけで孤独と鬱憤を絵に描いたように表す▼この二組の夫婦に絡むのが馬の世話係ウィリアムだ。レオノラは乗馬が得意で夫はドベタ。内緒で妻の愛馬にまたがり森に出たのはいいが、馬は乗り手をバカにして振り落としてしまう。ある日、夫はウィリアムが全裸で裸馬を走らせる光景を見て目が吸い付けられた。ウィリアムは妻レオノラの寝所に夜毎忍び込み、じっと朝まで寝顔を見ているのだ。この映画の人間関係はどこまでも食い違いばかりで、登場人物の誰一人として、心満たされている人はいない。忍び込んできたウィリアムのあとをつけて、妻の寝室に来た夫は、椅子に座って妻を凝視しているウィリアムを見て、嫉妬に狂い撃ち殺す。銃声で目が覚めた妻は絶叫する。夫は拳銃で自分の頭を撃ち抜く。救いもヘチマもありません。1940年代ですから、ゲイに対する理解はなく、忌むべきものとされています。ウェルドンは、駐屯地という「男だけの世界もいいものだよ。装飾もなく贅沢品もなく、簡素で」と発言し、かろうじて抵抗するが、妻や隣人の視線は冷たい。妻もまた、結婚生活の地獄に陥っていて、不倫や乗馬で何も解決できないことを知っている。知っているが、自分の不幸の原因は全て夫だと決めつけ、夫の内面を認めようとしないから、彼女の世界はますます閉ざされる。レオノラの唯一の友だちはアリソンでしたが、彼女も亡くなる。「アリソンを返して欲しいわ!」といわずにおれないレオノラもまた「心は孤独な旅人」。爽やかさのかけらもない映画ですがなぜか、人は理解しあえるとは限らなくても、心のどこかでは温かくありたいと思わせてくれます。音楽は黛敏郎。