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特集「最高のビッチ」

2018年5月26日

特集「最高のビッチ6」⑥ノオミ・ラパス1
ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女(2009年 ミステリー映画)

監督 ニールス・アルデンオブレヴ

出演 ノオミ・ラパス/マイケル・ニクヴィスト 

シネマ365日 No.2491

ニーチェ的女子 

最高のビッチ

「ドラゴンタトゥーの女」は、ノオミ・ラパスも、ルーニー・マーラのそれも書いたので、取り上げることはないと思っていたのですが、ヒロイン、リスベットの新しさだけに絞って「ビッチ」シリーズに加えました。リスベットは自分空間に棲みつく、反社会、反体制の天才ハッカーです。人が集う美徳や社会的常識、安らぎから撤退した、あるいはそれらを拒絶した女である。しかもとんがった才能を駆使してダークサイドで楽々と生きていける、深海の異種の生物のような稀有な存在です。学校にも行かなかった、友達もいなかった、母親は父親から虐待を受け、父親にガソリンをぶっかけて焼き殺そうとした。ハッキングの技術を縦横無尽に使ってリサーチャーとして卓越した能力を示す、といえば聞こえはいいが、実は犯罪スレスレのところにいつもいる。危険で野蛮で、判断も行動も人を頼まない。孤高の戦士かもしれないが、彼女の思考からすれば常人に交わらない、ニーチェ的女子というのが当たっています▼唯一、ミカエル(マイケル・ニクヴィスト)に心を開きますが、彼がやさしい男だったこともさることながら、リスベットが教えてやらないと解決の手がかりがつかめなかった、自分が常に優位性を保てる相手だったことも「許せる相手」として必要事項だった。リスベットは女を虐待する男を憎悪する。ベッドを共にするのは女で、ミカエルとは欲望の処理のような済ませ方でした。隣にいるミカエルに気がつき「そこで何をしているの? 自分のベッドに戻って」などと言っている。アクションだけを取り上げれば、突出した女優も作品もありますが、社会と体制に背を向けたヒロインとしては「ソルト」があり、最近では「アトミック・ブロンド」があります。これらはどこかでリスベットの血を引いています▼リスベットの臭覚は事件の異常性をすぐ嗅ぎ当てる。蛇が蛇を見分けるのと同じです。40年前に失踪した実業家の姪、ハリエットの捜索にあたりながら、彼女が聖書に書き残した数字から殺人現場をたどり、殺害する方法が犯人の残虐な嗜好によるものであることを特定する。物語は一方で殺人事件の謎解きを基軸にし、もう一方でリスベットの過去にさかのぼりながら、残虐、暴力、サドマゾ的変態セックスへのアプローチを強めていきます。犯人はセレブ一族のサイコ男による連続大量殺人だった。ハリエットは父親と兄による性的虐待を14歳から受け、16歳のとき従姉の手引きによって屋敷から逃走した。父はハリエットが自ら手にかけたが兄は生きている。彼を追い詰めたリスベットは、事故で炎上する車から救出しようともせず見殺しにする。「俺なら助けた」というミカエルを無視。リスベットのテキストには「目には目を」の一行しかない。リスベットが殺伐とせず、逆に精彩を放つのは、彼女が虐げられる立場から逆襲するからです。ダークサイドに生存することは、輝く権利を放棄したこととは違う。それどころか、身震いするような凡庸さをあざけってもいいのだ…その強烈な意識と行動と破壊力が、長い間世界への手がかりを探していた女たちに力を与え、リスベットを新しくしています。