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特集「最高のビッチ」

2018年5月30日

特集「最高のビッチ6」⑩ジェシカ・チャスティン1
女神の見えざる手(上)(2017年 社会派映画)

監督 ジョン・マッデン

出演 ジェシカ・チャスティン/マーク・ストロング/ジェイク・レイシー

シネマ365日 No.2495

眠らない女

最高のビッチ

やりましたね、ジェシカ・チャスティン。アウトサイダーを演じてコツコツ実績をつくってきた彼女の新代表作となりました。邦題もいいです。原題は「ミス・スローン」ヒロインの名前です。「見えざる手」とはアダム・スミスの「国富論」に出てくる経済用語ですが、ヒロインの、企業間交渉を左右する支配力として「女神の」としたところが心憎い。そもそも彼女の作品にはアウトサイダーの系譜がある▼「ペイド・バック」の諜報員、「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」は差別するご近所を気にせず、黒人のメイドと仲良くする主婦、「キリング・フィールズ失踪地帯」のクールな刑事、「マダカスカル3」のジア(豹の声)、「欲望のバージニア」は流れ者の娼婦。ビン・ラディンを魔に憑かれたように追い詰める「ゼロ・ダーク・サーティ」は出世作です。「インター・ステラー」の宇宙飛行士のパパを信じて宇宙に夢を描く娘もよかった。「アメリカン・ドリーマー理想の代償」は、煮え切らない夫に引導を渡すギャングの妻。霊が連れて行こうとする子供にしがみついて、地上に引き戻した「MAMA」。「クリムゾン・ピーク」は詐欺師の弟と近親相姦するサイコな姉、「オデッセイ」はNASAの指示に反し、軍法会議を覚悟でクルーを救出に行く凛々しい准将。「スノーホワイト/氷の王国」は、シャーリーズ・セロンという最強のビッチを向こうに回し(やや目立たないのが残念だったけど)、でも潰されずに存在を主張しました▼ことほどかように彼女のキャラは、組織と社会のアウトサイダーにフィットするのだ。本作ではワーカホリックにして権力志向、使える者なら堕天使でも叩き起こし、最後に勝利する鉄板女子を好演しました。彼女は本作でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされています。監督ジョン・マッデンとくれば、「恋に落ちたシェイクスピア」「コレリ大尉のマンドリン」「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」「同第二章」を監督。ジェシカとは「ペイド・バック」以来二度目の顔合わせとなります▼ロビイストとは…冒頭にスローンが言います。「ロビイストの仕事は敵の動きを予測し、対策を考えること。勝者は敵の一歩先を読んで計画し、敵が切り札を出し切った後、自分の札を出す。敵の不意をつき自分はつかれてはいけない」。映画は彼女の言葉通り進むのですが、いくつもの伏線と企みがミステリアスに重なり、最後にアッと言わせます。スローンは常に奇襲をかけ、必ず表と裏、同時に動く。「私の専門は税と自由企業への政府干渉です。私は信念のために働き、眠る」。同僚がつぶやく。「眠らないくせに」。彼女がバッグに入れて持ち歩くのは、睡眠剤でもなければ安定剤でもない。睡魔を払う神経興奮剤です。眠ること、食べること、男と暮らすこと、家庭を持つこと、料理洗濯家事に費やす時間? あるに決まっていますがスクリーンでは完全に抹殺。A.Iもここまでか。あまりにきっぱり、いわゆる日常生活をどこかに置き忘れた、というより追放したスローンが、異形の肖像に見えるか、新しい女性像に見えるかは、映画を見る人次第。