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特集「サイコパス」

2018年6月4日

特集「サイコパス」④ マイケル・シャノン
THE ICEMA 氷の処刑人(2012年 事実に基づく映画)

監督 アリエル・ヴロメン

出演 マイケル・シャノン/ウィノナ・ライダー/クリス・エヴァンス

シネマ365日 No.2500

殺人は彼にとって「普通」 

サイコパス

時代は1964年ニュージャージー州。主人公リッチー・ククリンスキーをマイケル・シャノンが演じます。彼の奥さんデボラにウィノナ・ライダー。ククリンスキーはデボラを口説くが、彼女は「結婚前はセックスしない」女性。それをバカにした男を、ククリンスキーは彼の車に乗り込み、あっさり殺してしまう。デボラと結婚したククリンスキーは、ギャングのロイ専属の殺し屋となる。妻には金融ディーラーだと言ってある。仕事をすべて円滑にこなす彼はボスの覚えもめでたく、ニュージャージーの一等地に高級住宅を構え、仕立てのいいスーツを着て、娘二人は私立学校に通わせ幸福に暮らす。弟は刑務所にいる。面会に行った。弟は兄の幸せに毒づく。「女房と子供がなんだ。どうせ最後はブタ箱でくたばるのさ。くたばれ、家族ごっこなんか。無理だろ。俺らみたいな異常者が家庭人になるなんて。犬を列車に縛りつけたことを娘に話したか。近所のガキの頭をシャワーポールでヘコませたことは?」。兄「もう電話するな。お前のことは人に知られたくない」▼父として、夫として、つつがなく過ごすククリンスキーには、動物虐待や暴行など、衝動的に何をするかわからない性格が隠れていることを弟は指摘しています。ククリンスキーにとって、殺人は処理しなければならない仕事であって、感情の入る余地はない。彼は「女子供は殺さない」という掟を自分に課している。いちばん大事にするのは家族だ。妻を「ババア」と呼んだ男もあっさり殺した。インモラルと(自分なりの)モラルの間で、迷いもなく生きる殺し屋をマイケル・シャノンが淡然と演じます。殺しを目撃した少女を殺さなかったことや、運び屋のトラブルが絡んでククリンスキーはボスからクビを言い渡される。失業だ。金が入ってこない。ククリンスキーは同業の殺し屋、ミスター・フリージー(クリス・エヴァンス)と組む。シアン化合物を利用した殺害方法で次々殺人を実行し、死亡時刻をごまかすため死体を冷凍庫に運び込む。「氷の処刑人=アイスマン」の呼び名はここから来ています▼殺し屋業20年。彼の運は尽きる。足を洗おうとしたものの、まとまった金が欲しくて手を出した仕事でマフィアに追われる。殺人鬼アイスマンを追う包囲網がククリンスキーに張り巡らされた。逮捕。弟と一緒の刑務所に入り、死ぬまで出ることはなかった。殺しをする彼があまりに恬淡としているものだから、殺人は彼にとって「普通」だったのでは、いやそうに違いないと思ってしまう人は多いだろう。妻は一度も面会に行かず、生きて会うことはなかった。娘の一人はマフィアに殺された。ククリンスキーの表情には動揺がない。慟哭も号泣もない。地獄の底のように静かだ。深淵を覗こうとして深淵に覗かれてしまった男をマイケル・シャノンがバシッと決めている。彼の作品では「ランナウェイズ」が好きです。女子ばかりのロックバンドをやりたいと言ってきたクリステン・スチュワートに、閃くものがあった音楽プロデューサー、キムに扮しました。彼は教える「ロックは暗闇に生きる人間の格闘技だ。彼らは叫ぶ。世界中大キライ、権力がなんだ、オーガズムをよこせ!」。本作の主人公もまた、心の暗闇に生きる人間でした。「ハンズ・オブ・ラブ  手のひらの勇気」では、ゲイの同僚ジュリアン・ムーアを最後まで援護して差別と闘う、骨のある警官がよかった。