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特集「サイコパス」

2018年6月8日

特集「サイコパス」⑧ 谷村美月
トリハダ(2012年 サイコ・オムニバス映画)

監督 三木康一郎

出演 谷村美月

シネマ365日 No.2504

サイコパスのカタログ 

サイコパス6-10

6編の短編が集まってどこかの部分で接触しながらラストに至る。各編の主人公たちは、サイコパス、あるいはサイコパスに被害を受けるのだけど、そんなに怖くない。これは致命的ね。心が病んで、自分自身が信じられない、つらい、逃げ出したいのだけど、もう一人の自分が殺人や暴力に奔る、そういう設定かと思ったけどそれもちがった。快楽殺人でもなかった。日常の裂け目に狂気が潜み、彼や彼女は無意識に引きずりこまれる、一歩踏み外せば異常な空間はいつも私たちを取り巻いていて、はまり込むかはまりこまないだけの違いだ…多分そういうことを描きたかったのだと思うけど。でも、それがどうした、で終わってしまうのよね。いちばん物足りなかったのは、サイコパスという「はみ出した異界の人たち」の悲劇性が弱かったことね。本作にあるのは犯罪性ばかりで、彼らが一生抱えていく精神の沼地、不毛の暗黒地帯とは無縁の、平坦な「サイコパスのカタログ」になっていることよ▼それでも80数分の尺に6話を詰め込んだのは巧みな技ね。レンタル倉庫を借りている女性は、ウロウロしているヘンな男が、鍵をかけ忘れた自分の倉庫を勝手に覗いている。ドスの効いた声で「何やってンの」そして手近にあった鉄パイプで殴り殺し、段ボールに詰めて倉庫に隠す。覗いた男も変態みたいだけど、殺されちゃかなわんな。二作目は宅配便の兄ちゃんがストーカーされる。彼女は異人種のような風体で、しつこく青年に付きまとい、シャンプーの容器に切断した小指を詰めて青年の洗面所に置いておく。と思えば車の後部座席にいつの間にか現れ「責任とれよ」とすごむ。重度クレイマーが電話で怒鳴り込む。対応する女子社員(谷村美月)に暴言を浴びせる。このクレイマーは谷村のアパートの、いつも愛想のいい隣の住人だった。彼女が「やかましいんだよ、てめえら」と毒づく意味は、不倫相手とセックスしている時の声が耳障りらしく、でも彼女は夜な夜な、ベランダから覗きをやっていた。手のひらの痕は彼女のものだ。谷村は不倫相手とクレイマーおばさんを殺し、飛び降り自殺する。不倫相手の妻は夫の保険金9800万円なにがしを受け取り会心の笑みエピソードはまだありますが一つだけ。「隣の川村です」と名乗ってシチューの鍋を持ってきた青年がいた。鍋を返しに行くと部屋から出てきたのは別人のおばさんだった。「シチューいただきました。旦那さんによろしく」「あんた、さっきから何言ってんの。私一人暮らしだけど」鍋には切り取られた舌が煮込まれていた。テレビは「河川敷から女性の頭部が発見され、舌が切り取られていた」と報道する。ゴシックサイコね。サイコパスとして描かれている女性や男性が、自分の人格に苦しんでいないことも不思議だし、奥に踏み込まなかったことが、本作を薄っぺらにしている。