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特集「最高の悪役」

2018年6月17日

特集「最高の悪役2」②
レディ・ガイ(下)(2018年 ホラー映画)

監督 ウォルター・ヒル

出演 シガニー・ウィーバー/ミシェル・ロドリゲス

シネマ365日 No.2513

愛にも似て

意識を取り戻したフランクにジェーンはこういうのだ。「私はあなたに手術を施した医師よ。理由はあなたが私の弟を殺したから。あなたは女性として生まれ変わり、人生をやり直せるの。私に感謝するはず。私はあなたを暴力の世界から解放してあげたわ。私の腕は最高で、完成度は高い。あなたの顔も体も傷を残さず整形した。その体を維持するには女性ホルモンが要る。すべて箱に入っている。幸運を、フランク。悪党のあなたにとってこれは罪を償うチャンスなの」どっちが悪党か知らないが、ジェニーは自意識のうちでは正義と善意の権化なのだ。自信満々が服を着ているようなものである。対してフランクはどんな性格だったか。「俺は感情のない少年だった。不安定で混乱していた。他愛ない会話もすることなく心が折れた少年だった」。繊細というより弱々しい。初めから勝負あった、という位置付けで映画は展開されます▼手術したジェニーに報復しようとフランクは探しまわるが、逆に捉えられてしまう。ジェニーが来て「折角女にしてあげたのに、あなたの頭の中は進歩がなかった。うろつく荒くれ者。チャンスを無駄にしたわね。今夜10時、もう一度手術するわ。右腕を切り落としてヒレをつけるの。(殺しはもうできないから)それで世界が安全になる」。フランクはでも腐っても殺し屋、隙を見てジェニーと護衛たちを撃ち脱出、警察に通報する。肩を撃たれただけのジェニーは精神に異常があると見なされ、拘束衣を着たまま、セラピストが対応している…これが冒頭のシーンだ。結論を言うと、ジェニーは病院に収容され、指を切り落とされた。天才外科医は手術できなくなった。フランクのモノローグ「俺は男だった。本物の悪党だった。今は当時と心境が違う…」だから何なのよ。世のため、人のため右腕を切り落としてヒレをつける、などというシュールな発想に比べ、精彩がないわね。アクションが売りのロドリゲスに、ほとんどアクションがありません。削ぎ落としたような、シャープな頬をしたシガニーの役作りに比べ、ポチャポチャしているし。ロドリゲスにしたら貧乏くじを引いたというしかない▼思うに狂気の似合う役者、内側から狂気をにじませる役者って、半端なスキルではできないのね。「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンス、「レオン」のゲーリー・オールドマン、「サイコ」のアンソニー・パーキンス、「ヒッチャー」のルドガー・ハウアー、「コン・エアー」のジョン・マルコヴィッチもよかったですよ。女優では「キャリー」のジュリアン・ムーアの狂いぶり、「甘い毒」のノホホンとしたリンダ・フィオレンティーノ、意外と「ウーナ」のルーニー・マーラあたりは異常性が好きですね。大事なことは「悪とは平凡だ」ということをしっかり理解している人。悪とはかけはなれた特別な場所に存在するのではなく、日常の滑っていく一瞬の中できらめく、愛にも似ているのです。