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特集「最高の悪役」

2018年6月20日

特集「最高の悪役2」⑤
ブラック・ビューティ(2016年 サスペンス映画)

監督 ソフィア・タカール

出演 マッケンジー・デイビス/ケイトリン・フィッツジェラルド

シネマ365日 No.2516

嫉妬で破滅

0620_22最高の悪役

本音をいうと「さっぱりわからん」のですが、女性監督のソフィア・タカールと主演女優の二人が頑張っていたので「最高の悪役」に入れました。タカール監督はインディー系の女優経験を経て監督活動に入っています。サスペンスと言うよりホラー映画ですが、その怖さの中核を作っているのは嫉妬。アンナ(マッケンジー・デイビス)とベス(ケイトリン・フィッツジェラルド)は駆け出しの女優。ベスはテレビに出て少しは顔と名前が売れ始めた。未だくすぶっているアンナはベスに先を越されたという焦りとコンプレックスがある。「あなたは好きなことで稼げて幸せよ」と嫌味をいうし、ベスが雑誌のグラビアに大きく出ていたのを知り「なぜ黙っていたの」と食ってかかる。二人は親友だという設定なのですが、アンナがイジメ役、ベスがイジメラレ役で、親友どころの雰囲気ではありません▼ベスは横暴なアンナに逆らわない。「わざわざいうほど、たいしたことじゃないから黙っていたのよ」ベスは収まらず「大金を宣伝写真と歯列矯正につぎ込んだのに」なぜ自分が日の目を見ないのか、恨みがましい。見当ちがいだと思うのですけどね。まるでベスが自分を踏み台にしたみたいにねじくれています。ふたりはアンナのおばさんの別荘で休暇を過ごすことにする。ボーイフレンドのポールと別れを惜しむベスが気にくわない。安っぽいダイナーで食事し、ベスが払うという。アンナは気にくわないが、手元不如意は事実だ。ベスは「ビールのCMにでて稼いだからおごりたいの」とやさしくいう。おまけに「最近、私、あんまりいい友達じゃなかったわね」とアンナを慰撫する。「酔っているのね」と忌々しそうにアンナ。「本気よ。恋人のヘンリーとの破局もいま知った。あなたを支えるべきだった。私のこと、キライよね。でも私はあなたが大好きなの。わかるよね。この週末をふたりで過ごせて嬉しいわ。あなたはいま試練の時ね。あなたは綺麗で素敵で才能に溢れている。きっと上手くいくわ」。嘘にせよここまで褒められたら気分も穏やかになると思うのですが、アンナの反応は冷たい。ふん、おだてても腹の中では役を取れない私を馬鹿にしているだろ、と思っている▼ベスは自分でもわかっている通り大女優の器ではない、せいぜいCMかホラー映画の叫び役か、だから「私の出る映画は馬鹿げたホラーよ。内容はアイスランドの石の話」「あなたのタイプって、しおれた花ってところね」憎々しげにアンナ。どこまでも性格ブスである。「この2年で10回脱いだわ」「娼婦みたいね」アンナというのはこの程度のセンスだから、そりゃどんな役も回ってこないだろう。そこへマットという短編を撮っている青年が合流してアンナに「映画のロケ地を探している。君に出て欲しいとベスに頼んでおいたのだけど」「ベスを出せば?」「ベスは大物だからな」アンナはガツーン。自分を見るアンナの敵意にベスは辟易。「嫌悪感剥き出しね。悲しいわ。友だちだと思っていたのに」途方に暮れポールに電話で助けを求める。「アンナに憎まれている。どうでもいい映画に何本か出た結果がコレよ。彼女は私の成功が喜べないの。私は仲良くしようとしているのに。彼女のほうがいい女優だけど、たまたま私の外見が皆に好かれるだけよ」アンナがそれを立ち聞きした。たちまち「純情そうに振る舞っているけど、あんたはウソつきでナルシストで、最悪の友だちよ」ベスは泣く。「ウソ泣きよね。スター気取りのクソ女」。「ペッ」とベスはアンナにツバを吐きかけた。形相も凄まじくアンナはベスを追う。夜の森の中に逃げたが追いついたアンナはベスを絞殺する▼ここからが虚無と妄想の世界。車でベスを追いかけてきたポールはケータイがつながらず、二人がいるはずの別荘にたどり着けない。ベスに成り代わったアンナにベスの幻が現れる。バーで知り合った男が「君、女優か、すごい」と言ってベタ誉めしてくれるが、実はアンナをベスだと思い込んでいる。アンナは「女優といってもくだらないホラーばかりで、イプセンとかは、やらないのよ」とベスの受け売りをいう。幻のベスが腕を掴み「娼婦の気分?」と訊く。森に逃げ込んだアンナは目が覚めると朝だった。家に戻ると警察が遺体を運び出している。そこでエンド。話のつじつまをどうつければいいの? 遺体はベスか。ベスでしょうね。森で死んじゃったのではなかったのか。それとポールはどうなった。アンナに殺されたふうでもなかったけど。アンナが自尊心のかけらもなく嫉妬に狂ったのは、それはそれでアリとしよう。でもそのせいで安易な結末になっているわ。監督はアンナを正気にしたまま彼女の破滅を見定めた方がよほどすっきりしたと思える。狂気は魅力のある設定かもしれないが、イージーに用いるべきではないよね。第一、マッケンジー・デイビスは178センチの健康美に溢れていたし、どう見ても幻影を見るタイプではない。儚げな趣のあるケイトリン・フィッツジェラルドを狂わせた方が似合ったと思える。