女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「感じのいい女優」

2018年6月26日

特集「感じのいい女優」ナオミ・ワッツ8日間④
雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2017年 家族映画)

監督 ジャン=マルク・バレ

出演 ジェイク・ギレンホール/ナオミ・ワッツ

シネマ365日 No.2522

妻が死んでも泣けない夫 

特集「感じのいい女優」ナオミ・ワッツ8日間

ウォール街のエリート金融マン、デイヴィス(ジェイク・ギレンホール)は交通事故で妻を失う。同乗していた自分は無事だった。妻はデイヴィスが勤める会社の社長の娘。郊外に洒落た家を持ち、妻のジュリアとは何不自由ない暮らしだった。妻の死にデイヴィスは涙ひとつこぼれない。自分は欠陥人間だと恐れを抱く。深夜病院の自販機が作動しないことに腹を立てた彼は、バカ丁寧なクレームの手紙を書き郵送する。デイヴィスの手紙を処理したのがクレーム係のカレン(ナオミ・ワッツ)。シングルマザーで15歳の息子がいる。彼女に言わせると「見た目は12歳、行動は21歳、怖いくらい頭がいい」。デイヴィスはカレンから電話を受けとる。深夜2時だ。「苦情のお手紙4通いただき、読んで泣きました。苦情は担当に伝えます」妻の死に悲しめず、苦情処理係に気合いの入った身の上話をし、それを読んだ女が泣いたと夜の2時に電話してくる。本作の主人公はどっちも社会不適合か▼デイヴィスは1012年前くらいから胸のあたりが無感覚だと医師に言う。検査の結果「心臓が欠けている。原因はマイマイガだ」。よくわからんが、デイヴィスはカレンとデートするようになり、カレンの息子クリスと気があう。「僕はゲイかな」とクリスが打ち明ける。「たぶんゲイだと思う」とデイヴィス。「あと2、3年は女の子が好きなふりをしろ。マンハッタンに引っ越せ。サンフランシスコでもロスでもいい、あったかくていいところだ」とアドバイスする。デイヴィスは義父であり社長であるフィルから「心の修理も車の修理も同じだ。分解して隅々まで点検し、組み立て直すのだ」という指示に、周辺のもの全て、会社のトイレ、パソコン、冷蔵庫などを解体する奇行に走る。ひたすら破壊に没頭し、休養を言い渡される▼デイヴィスは暇になり、カレンとクリスとさらに親密度を増し、カレンとセックスしない関係で同居する。デイヴィスの破壊衝動はますます過激になり、解体業者を手伝うだけでなく、ブルドーザーで自分の家を解体する。壁も打ち抜き、床をはがし、窓もぶっ壊して家はバラバラ。瓦礫の間から、妻が妊娠していたスキャンと診断書を見つける。妻の両親はデイヴィスに冷たい。なぜ娘が、君が死ねばよかったとあからさまに言う。妻の妊娠をなぜ自分だけ知らなかったのかと義母に訊くデイヴィスに「理由を知りたい? あなたの子ではなかったのよ。他に男がいた。中絶には私が付き添ったわ。産めばよかったのに」。デイヴィスは正気に戻る。本当にやるべきことは何か。自分は妻を愛していなかった。おろそかにし、無関心だった。他の男に走っても無理はない▼罪の意識から逃れるためとはいえ、家まで潰さないと正気に戻れないの? 所詮、自分が汗水垂らしてやっと手に入れたマイホームじゃないからよ。家、仕事、地位、妻までも、義父の財力で揃えてくれたから愛着などないのよ。妻が死んだって部品の一つが欠けたようなものじゃない。他に男がいたとわかって、妻も自分を愛していなかった事実を突きつけられる。お寒い男ね。妻が好きだった遊園地の回転木馬が、倉庫に誇りをかぶっているのを見つけ、妻の遺産の使い道として、子供達のために遊園地で復活させる。瀟洒な家、美しいまでに精巧に機能するパソコン、それらを無残にガンガンぶち壊すさまは目を背けたくなる。家とはたとえ別れることになっても、そこで暮らした家族との思い出が立ち込めている、精神の故郷ではないのか。ナオミ・ワッツはナチュラル・エイジングの見本みたいでよかった。この人、無理しないところがいいね。本作では大した役じゃないにせよ、サラサラこなしていたわ▼話は変わるけど、デイヴィスみたいな男や女は意外と多いのではないかしら。傍目には格好つけて悲しんでいるけど、相手との離反に、内心ホッとしている旦那に妻。彼女は空涙で保険金を算定する。「後妻業の女」ではないけど、あれに比べたら、ものを壊すだけ壊して気がすんで生まれ変わるなんて、デイヴィスは生活のために耐えることも知らず、金の地獄も知らない「トッチャン坊や」なのだ。