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特集「感じのいい女優」

2018年6月27日

特集「感じのいい女優」ナオミ・ワッツ8日間⑤
ステイ(2006年 サスペンス映画)

監督 マーク・フォースター

出演 ユアン・マクレガー/ナオミ・ワッツ/ライアン・ゴズリング

シネマ365日 No.2523

許してくれ、許してくれ

ナオミワッツ8日間

交通事故で両親と恋人を失った青年が、息をひきとる数秒か、数分の間に幻想を見る、それが本作の内容です。ユアン・マクレガーが精神科医サム。ナオミ・ワッツが自殺癖のあるサムの元患者で現在の恋人ライラ、サムの診察室にやってきたヘンリーがライアン・ゴズリング。ライアン・ゴズリングがひょろ長い顔で、音もなく部屋に入ってくる、ここで妄想オチか夢オチだなと察しがつきます。マーク・フォース監督は早い段階で夢オチだとわかってもかまわない、むしろそのほうがやりやすい、俳優力で見ごたえのある映画にしようとでも思ったのか、凝った映像と物語の切り替えで、飽きさせず、尻切れトンボの幾つかのシーンも意に介さず、ラストになだれ込みます▼ライアン・ゴズリングは25歳でした。繊細な青年の表情がよく出ています。「ドライヴ」なんてほとんどセリフなかったものね。ユアン・マクレガーの精神科医とナオミ・ワッツの画家役は、ヘンリーが勝手にこしらえた存在だから、やはり途中でほころびがありました。ヘンリーとは、物語の「かき回し役」でして、彼の母親が死んだ、生きている、父親が死んだ、生きている、サムが犬に噛まれた、ライラが自殺未遂を繰り返し、画業に行き詰っている…行き詰まりどころではない、ひどい絵を描いているのですけどね。手が込んでいたのは、ヘンリーが土曜の真夜中に自殺する、と言い残して診察室を出たことなのです。サム先生はそれが気になって、ヘンリーの所在をつきとめ自殺を防ごうとする。彼の片言隻語をたどって母親やら家やらをつきとめ訪問する。でもどこにもヘンリーはいない。そしてふらりと診察室に現れたりする。このあたりになると、映画はどこで真相をバラスのか、そっちのほうに関心が移ります。一方では一生懸命、サムやライラが虚構の存在を演じているわけね。ひねた観客なら「あなたたち頑張っているけど、最後はわかっているのだよ〜ん」で寝ちゃうでしょうね▼連続するいくつものエピソードを、煩わしいと取るか、緻密と取るかは人によるけど、青年ヘンリーが自分を投影した夢環境で、精神科医が現れるのは、心に傷があって、それを再構築したいと潜在意識で願っていたのね。それと「許してくれ、許してくれ」と壁一面に隙間なくビッシリ書き込んでいるサイケな場面がある。ヘンリーは車をぶつけ、恋人も両親も死なせちゃったから、それを「許してくれ、許してくれ」と謝っている。よく知らないで書くのもナンだけど、人間の意識って、死の寸前の数秒間で劇的に物語を構成できるものなの? 事故の現場はブルックリン大橋。炎上した前車輌にドライバーたちは駆け寄る。「僕は医者だ、手当をする」とサムがいい、「私は看護師よ、手伝うわ」とライラがいう。彼らは事故現場で初めて顔を合わせたってことね。ナオミは看護師だって。ヘンリーは苦しい息の下からライラを恋人だと勘違いし「結婚しよう」という。ちゃんと指輪も用意していた。可哀想に。手当(というほどの時間はなく)ヘンリーは息を引き取った。救急車が遺体を収容し去る。サムは一瞬フラッシュバックがよぎり、ライラと何か接点があることを感じる。「初めてプロポーズされたわ」とライラ。「コーヒーでもどう?」とサム。どうでもいいけど、ジャケ写の「究極のサイコ・スリラー」は究極の誇張。