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特集「感じのいい女優」

2018年6月28日

特集「感じのいい女優」ナオミ・ワッツ8日間⑥
追憶の森(2017年 ヒューマン映画)

監督 ガス・ヴァン・サント

出演 マシュー・マコノヒー/渡辺謙/ナオミ・ワッツ

シネマ365日 No.2524

なぜ私は怒っていたの?

ナオミワッツ8日間

とてもスピリチュアルな映画。自殺するために青木ヶ原の樹海にやってきた男アーサー(マシュー・マコノヒー)が、道に迷って死にかかっている男タクミ(渡辺謙)に出会う。家族の元に帰りたがっている彼を助けようと、助け合って森の出口を探すうち、二人に生きようという希望が湧く。アーサーの妻ジョーンがナオミ・ワッツだ。アーサーの浮気を知って怒りが盛り上がり、修復できなくなったものの、どこかで夫の愛情を感じたい妻。今でも夫を愛しているが、傷口がふさがらずことあるごとに夫といがみ合う。しかしジョーンに腫瘍が発見され、困難な手術であるとわかる。それをきっかけに二人は絆を取り戻し、手術は成功し、しかも腫瘍は良性だった。幸福が舞い戻った夫婦だったのに、転院の途中、トラックが激突しジョーンは事故死する▼それが2週間前だった。ジョーンは「もしあなたが死ぬときは、自分が理想と思う死に場所を見つけて。機械で囲まれた病院で絶対死なないで」と約束させた。アーサーはグーグルで青木ヶ原に決めた。アーサーは科学者で霊の存在を信じなかった。タクミは逆に死後の霊魂を信じている。動けなくなったタクミに必ず戻るとアーサーは約束し、森の出口を見つける。一週間後、タクミを迎えに行くがそこには誰もおらず、アーサーが着せていったコートの下に白い花が咲いていた。アーサーは、霊があの世に帰るときは花が咲くといったタクミの言葉を思い出した。タクミは実在の人間ではなく、アーサーのそばに寄り添う霊です。タクミは妻の名は「キイロ」、娘は「フユ」だといった。アーサーは帰国して大学に戻ってから、学生に「それは黄色と冬。日本の季節と色です」と教えられた。タクミは生きる希望も勇気もなくしたアーサーに、挫折も絶望もあるが、それでも人生は生きる価値があると教える存在です▼ジョーンは非常勤講師で年収2万ドルの夫に代わり、不動産会社に勤め家を売り買いしている。仕事で疲れ果て、家に帰って夫の顔を見れば、人の苦労も知らず浮気したことを思い出す。つい言葉も顔もとんがって、夫も売り言葉に買い言葉で、家中の空気は凍りつく。ジョーンのアルコールの量は増える一方だ。「3年間、僕は針のムシロだった。君は必ず攻め立てる」「もっといい仕事を見つけて。私を利用し続けている。たまには私の世話をして。最優先するのは自分のことばかり」。死にに来た場所でタクミに「奥さんを愛していたか」ときかれ「世界でいちばん愛していた。浮気なんか出来心さ。魔が差した。心のゆるみってやつだ」なんてまあ、死にかけていても男の決まり文句は変わりませんね▼ガス・ヴァン・サントらしいと言えば言える、稀に見るピュアな映画です。顔を歪めて旦那に嫌味をいうジョーンが、ふと我に返ったようにつぶやくセリフが妙に説得力がありました。これです「なぜ私は怒っていたの。いろんなことに」。タクミは青木ヶ原がただの森ではない、「この森は煉獄だ。漆黒の闇にまぎれ、愛する人はそばにいる。たとえ死んでも」。これは素直に受け止めた方が人は安らぐはずです。心安らぐことで人は失ったものに気づき、自分のために装いを変えた過去を見出すはずです。