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特集「ヒッチコックが新しい」

2018年7月1日

特集「ヒッチコックが新しい」①
私は告白する(1954年 サスペンス映画)

監督 アルフレッド・ヒッチコック

出演 モンゴメリー・クリフト/アン・バクスター

シネマ365日 No.2527

たかが浮気じゃないの 

ヒッチコック

 女優イジメのエピソードがいくつも伝わっているし、確かに事実なのだけど、ヒッチコックのヒロインたちは基本「強い女」であり、ヒッチコックはビッチが好きなのだと、彼の映画を見始めた頃から思ってきました。今も変わりません。フランソワ・トリュフォーがヒッチコックを質問攻めにした「映画術」は、映画のテキストみたいにすっかり有名になってしまいましたが、(いったいいつになったらトリュフォーのおしゃべりはやむのだろう)と、辟易しながらも読みきってしまったのは、合いの手でヒッチコックがヒョイと面白いことを言っているからです。彼は議論が嫌いだった。「たかが映画じゃないか」とは、監督の長回しに激昂して20分(もしくはそれ以上)怒り狂っていたイングリッド・バーグマンに言った、とドナルド・スポトの評伝にあります本作の主演はモンゴメリー・クリフトです。こんな神父なら、信徒は告解に行列するだろうと危惧するくらい、美しく気高い。信徒の一人から殺人の告解を聞き、正義と信仰の義務でマイケル神父(モンゴメリー・クリフト)は悩むのだけど、彼にもアリバイを言えない弱みがあった。事件当夜、国会議員の妻ルース(アン・バクスター)と会っていたのだ。容疑は神父にかかる。真犯人は彼に守秘義務があるから絶対、自分の名は言わないと見越している。マイケルは「聖職者の手本」と言われるくらい、義務感が強いのだ。検事がじわじわとマイケルいじめをやり、美貌ゆえ、よけい彼の苦悶が引き立つ。見ているほうまで悶々となる。この「悶々」にスパッと幕引きするのがルースです。彼女は今も元カレ、マイケルが好きだ。旦那がチクチク嫌味を言うと、「何よ、過去の浮気じゃないの」と一喝。かくもあっさり全然自分が悪いと思っていない女性、今でも何人いるでしょうね▼マイケルの性格なら、舌を切られても犯人の名を言わないとルースはわかっている。だから検事に「彼は私と会っていたのよ。彼の犯行でないことを証言したいの」ときっぱり。アレコレ男が悩んでいたことを、蹴飛ばすように解決してしまいます。嫌疑が晴れ、犯人も死に、元カレはもう大丈夫、と見て取ったルースは「帰りましょう」と夫を促す。夫は夫で、妻が「過去の浮気」を引きずるような女でないことがわかっている。マイケルと会っていたのは、昔の情事をネタに、二人を脅していた弁護士に対応するためだった。被害者はこの弁護士だったから、マイケルが疑われるのは無理ないのだけど。手の内を明かせばあっけない内容を、ヒッチは遊園地の大道芸人のような名人芸でシーンを切り替え、引っ張っていきます。アン・バクスターは本作の7年前「剃刀の刃」でアカデミー助演女優賞を受賞。それにも増して、ファンの記憶に残るのは「イヴの総て」でしょう。ベティ・デイビスを踏み台にしてのし上がっていく新人女優を演じ、デイビスとともにオスカー主演女優賞候補となりました。健康で体格のいい、気品のある(もひとつ言うならブロンドの)女優が好きだったヒッチのタイプです。