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特集「夏こそベストコレクション」

2018年7月29日

特集「夏こそベストコレクション」⑥
ルージュの手紙(上)(2017年 家族映画)

監督 マルタン・プロボ

出演 カトリーヌ・ドヌーブ/カトリーヌ・フロ

シネマ365日 No.2555

ダサいコート、脱げば?

夏こそベストコレクション

監督がマルタン・プロボ。「ヴィオレット ある作家の肖像」「セラフィーヌの庭」があります。「ヴィオレット」もそうでしたが、本作も簡単に言うとカトリーヌ・ドヌーブとカトリーヌ・フロの二人劇です。30年ぶりにふらりとパリに帰ってきた継母ベアトリスがドヌーブ。1213歳だった自分を捨て出奔、以後音信不通。父親アントワーヌはショックでピストル自殺、母親の風上にも置けぬベアトリスに、憤懣やるかたない娘クレールがフロです。脚本もプロボ。ボケとツッコミのセリフが絶妙です。本作がヒューマンな人生賛歌であることは間違いありませんが、母親を毛嫌いしていた娘が、翻弄されながら真逆の生き方をする彼女に友情を感じていく、今まで母親とか、女とかの役割に縛られていた自分から解放されていく、そのプロセスを終始無愛想なフロがよく出していました。脳腫瘍で死ぬ寸前の母親が生にすがりつきもせず、同情も請わず、金がなくなれば賭場で稼ぎ、食べたいものを食べ、飲みたいものを飲む。その一方で冷静に終焉を見つめるスケールの大きな女性を、ドヌーブがどっしりと演じています▼粗筋や賞賛はたくさん書かれているのでやめます。その代わり磨き抜かれたセリフのやりとりを少し。不意の電話の呼び出しでクレールが雨のシャンゼリゼ(この光景が美しい)を、待ち合わせのマンションに行く。ドヌーブが現れるファーストシーンです。流浪の果ての初老の女という設定ですが、うらぶれていながら、大輪の牡丹のような艶やかさがしゃくにさわる(笑)。逆にクレールは質素・堅実を絵に書いたようなベテランの助産婦。ベアトリスを睨みつけ「ブエノスアイレスにいるのじゃなかったの?」(何をしに来た、という口吻がありあり)「100年も前よ」しゃらしゃらとベアトリス。憤怒を湛える娘に「昔から老け顔だったわね。そのダサいコート、脱げば?」ズケズケ言う。検査でわかった腫瘍が「手遅れだって。どう思う?」クレール、無言の対応。ランチに誘ったベアトリスは、オムレツとポテトと赤ワインを注文する。クレールはブスッと「水」。「父親と同じね。健康第一でお酒は飲まない。子供はいるか? 私に? よして。育てられないわ」。「父はあなたがいなくなったあと、銃で心臓を撃ち抜いたわ。遺灰はセーヌにまいたわ」ベアトリス、ショックで泣く。クレールはさっさと席を立つ。追いかけたドヌーブが「私に残った最後の指輪よ。あなたの父親がくれた。少しはお金になるわ。他は全て質に入れた」エメラルドの指輪をクレールの指にはめてやる。この指輪が本作を締めくくる最高の小道具となります。プロボ監督、大技・小技を繰り出していきます。