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特集「ベストコレクション」

2018年8月8日

特集「恋歌が聞こえる風の盆/8月のベストコレクション」⑧
ドリーム(下)(2017年 社会派映画)

監督 セオドア・メルフィ

出演 タラジ・P・ヘンソン/オクタヴィア・スペンサー/ジャネール・モネイ/ケヴィン・コスナー

シネマ365日 No.2565

私が前例になります 

8月のベストコレクション

 法律にも制度にも男社会にも異議申し立てをした、もう一人のビッチがいる。メアリ(ジェネール・モネイ)だ。ドロシーとキャサリンとメアリはNASA勤務。すぐ近くに住む仲のいい友人同士。メアリは有人飛行カプセル設計に携わる。彼女の上司ゼリンスキーは「いつまでも計算手でいいのか。技術者を目指せ」「私は黒人女性です。叶わない夢は見ません」「俺はユダヤ人で両親は収容所で死んだ。でも今は宇宙を飛ぶカプセルを作っている。夢は捨てるな」。メアリの夫でさえ、技術者になるというメアリに「正気か。子供たちの面倒は誰が見る」。不満が高じ、愚痴るメアリに、ドロシーとキャサリンはあちこち探し、技術者のための講座があると教える。だが白人男性しか受け付けていなかった。メアリは嘆願書を裁判所に提出した▼「メアリ・ジャクソン。なぜ黒人女性が白人の学校に?」「この州で白人の学校に行った黒人女性はいません」「前例がない」「宇宙に行ったアメリカ人もいなかった。初の宇宙飛行士をなったシェパードは前例を作り、名を残します。私はNASAの技術者を目指しています。それには白人の高校での受講が必要です。肌の色は変えられません。だから私が前例になるしかありません。これを許可したらあなたが前例になるのでは、判事?」メアリの独特な前例の解釈に、判事は苦笑しながら「夜間講座だけだぞ、メアリ・ジャクソン」。夜間学校に登校するメアリを夫が引き止めた。「これを使えよ」彼のプレゼントはシャープペンシルだった。「こうすれば新しい鉛筆の芯が出る。役立つだろ?」。百人に勝る味方を得たメアリは意気に燃え登校。いぶかる講師に「裁判所の許可があります。この教室には黒人の席がないから、空いた席に座らせてもらいます」最前列講師の正面にデンと着席した▼1962年2月20日。グレン宇宙飛行士の打ち上げが迫った。初の地球周回飛行だ。直前にハリソンが主任を呼んだ。「着水座標が昨日の数字と違うぞ」「IBMが出したのですが」「コンピュータが間違えたのか」「そのようです」グレンが言った。「今日まで自分がマシーンを飛ばしてきた。今はマシーンに飛ばされている気分だ。あの女性は?」「キャサリンか」「そうだ。彼女が正確だという数字を出したなら飛びます」「彼女の検算まで打ち上げは延期だ」。自宅で世紀の瞬間を見届けようと、ドロシーとメアリらと一緒にいたキャサリンに緊急指示。座標の検出に没頭した。NASAでは彼女の出した結果をグレンに伝えた。「やはり頼れるのは人間です」とグレン。「わかるよ。キャサリンは金属の塊より計算がうまい」とハリソン。「彼女に感謝を伝えてください」言い残してグレンは飛び立った。メアリらが作り上げた無敵のカプセルで。周回軌道の飛行を終え地球に帰還、大気圏に入る。遮熱板に赤ランプが点滅。トラブルだ。遮熱板が保たなかったらグレンは火だるまになって死ぬ。キャサリンが答える「着水まで維持できます」。「熱い、火の玉だ」というグレンの声を最後に通信が途切れた。何度目かの「応答せよ」。空白のレーダーに現在地が入った。グレンの元気な声が「よく聞こえるぞ。着水する」▼メアリは全米初の黒人女性航空技術者に。後進を指導し全人種の女性の地位向上に貢献した。FORTRAM(フォートラン=科学技術計算用のプログラミング)の専門家となったドロシーは、NASAが誇る天才として名を馳せた。キャサリンは月面着陸やスペースシャトル計画に参画。宇宙開発における功績をたたえ、2016年NASAは計算施設に彼女の名を冠した。国を超え人種を超え、差別を超え男女を超え、生涯にわたる彼女らの挑戦に、後世の一人として感動と感謝を捧げたい。