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特集「ベストコレクション」

2018年8月15日

特集「恋歌が聞こえる風の盆/8月のベストコレクション」⑮
ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命(下)(2017年 事実に基づく映画)

監督 ニキ・カーロ

出演 ジェシカ・チャスティン/ダニエル・ブリュール

シネマ365日 No.2572

「ウサギの名前は?」 

特集「恋歌が聞こえる風の盆/8月のベストコレクション」

 ラクダのアダムも殺された。ヤンはゲットーのゴミ処理係となりトラックで往復する。作業中、数人の兵士が路地裏に少女を連れ込むのを見た。作業が終わる頃、下肢を血だらけにした少女が道に放り出された。トラックの運転席に隠し動物園に連れ帰る。アントニーナがお湯を入れたタライを持って、納屋のワラに隠れている少女のそばに来る。恐怖とショックで引きつっている。「私はアントニーナ。ここは妙な場所でしょ。父はあなたの年くらいの時、サンクトベルクで撃ち殺された。家族は他人の家を転々とした。あの辛さは誰にもわからない。人を見ても誰が敵で誰が信頼できるかわからない。だからこんなに動物が好きなのかも。動物は人間と違う。心の中がはっきりわかる。ここは動物園よ。ほとんどの動物は爆撃で死んだ。でもこの子(ウサギ)は生き残ったの」次の日少女は壁に絵を描いていた。「いつか描き方を教えてくれる。ウサギの名前は?」「ピョートルって呼んでる。弟の名前だった」アントニーナは無言で泣いた。少女は自分の名前を教えた。「ウルシュラ」「白クマのことよ。知ってた?」▼匿う人数が増えてきた。真夜中のピアノは地下から「出てきても大丈夫」。昼間のピアノは「隠れる合図」。頻繁に動物園を訪問するヘックに夫は苛立ちを隠せない。パイソンの交尾を妻に手伝わせ、手まで洗ってやっている。「いつでも好きな時にやってきて君に触れる。何千人もが死んでいることを君は知らない。ここにいて男と戯れている」アントニーナは言い返す。「あなたがいない間、たくさんの人が身を隠す家に私ひとり。そこに彼が来る。発覚すれば銃殺。たまらなく怖い。わからないの? 彼は私たちを支配しているのよ」なによ、手を洗わせるくらい。アントニーナはヘックと寝る。今は生き延びる時だ…▼アントニーナが協力的すぎる。ヘックは彼女が何か企んでいると勘づく。地下の隠れ家が暴かれた。ヘックの到着より間一髪で先に動物園に走り戻ったアントニーナは全員をトラックに乗せ逃したのだ。生まれたばかりの娘を親友に預け「必ず探し出すわ」そう言って出発させた。動物園は焼却され、ゲットーの収容者は全員列車に乗った。行先はアウシュビッツ。アントニーナは廃墟となった動物園を出なければならない。息子とパイソンを引いて避難所に行く途中、森でパイソンを放してやる。レジスタンスとして交戦した夫は負傷したという情報以外わからなかった。1945年9月ワルシャワ。終戦とともに、焼け跡の動物園にアントニーナは来る。テレサとウサギのピョートルと息子を連れて。飼育係のイエジクが「お帰りなさい」と迎えた。ヤンが無事帰ってきた。ウルシュラも親友のマグダも戻った。20年後、イスラエルはヤンとアントニーナを「諸国民の正義の人」としてヤド・ヴァシエム賞を授与した▼感情をベタベタ付着させることを許さず、スクリーンの事実を叙事するしか手の出ない映画でした。レイプされた少女が、ひっそりとウサギを抱いて「ピョートル。弟の名前だったの」と言った場面は胸が塞がりました。ニキ・カーロ監督は「クジラの島の少女」、シャーリーズ・セロンの「スタンドアップ」。ダニエル・ブリュールには「青い棘」「戦場のアリア」「黄金のアデーレ」などが、ジェシカ・テャスティンは「女神の見えざる手」、本作、次の「モリーズ・ゲーム」と立て続けに賞レースに絡む問題作に出演、結婚もして公私とも快進撃。