女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

2011年8月1日

『潮騒』 三島由紀夫

Pocket
LINEで送る

三重県鳥羽市

画像提供:鳥羽市観光協会

冒頭に「歌島は人口千四百、周囲一里に満たない小島である」とあるように志摩半島の伊勢湾口に位置する神島が舞台。三重県の鳥羽から定期船に乗るとやがて島影が見えてくる。
島全体が山で八代神社、神島灯台、そして有名なラブシーンの舞台となった監的哨に行くには、ひたすら狭い階段を登る。いつもながらの絢爛豪華な筆致に圧倒されながらもあっという間に読み終えたのは、作者には珍しくエンターテイメント性も備えた明るく平易な青春物語に仕上がっているからで、ギリシアの古典を下敷きにしたという。が、ここに描かれるのはまさに日本の若者の往時の姿。外界から切り離され、自然と一体となることで熟成される恋は美しく、読後、目を閉じると瞼の裏で伊勢の海がまぶしいばかりに輝いていた。「若者は彼を取り巻くこの豊饒な自然と、彼自身との無上の調和を感じた。彼の深く吸う息は、自然をつくりなす目に見えぬものの一部が、若者の体の深みにまで滲み入るように思われ、彼の聴く潮騒は、海の巨きな潮の流れが、彼の体内の若々しい血潮の流れと調べを合わせているように思われた」。
情報が氾濫し、メール一本でどこでもいつでも誰とでも交信できる現代の若者は、何を媒介として恋をするのであろう。「セックスに決まってるやん」と言われたらどうしよ。

Pocket
LINEで送る