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特集「ベストコレクション」

2015年11月16日

特集「星の降る夜は/ベストコレクション」②
地上5センチの恋心(2008年 ファンタジー映画)

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監督 エリック=エマニュエル・シュミット

出演 カトリーヌ・フロ/アルベール・デュポンデル

 

シネマ365日 No.1570

女に頼る男・頼られるのが好きな女

特集「星の降る夜は/ベストコレクション」

この映画のどこがいいか。センスのいいセリフの応酬に一票、カトリーヌ・フロのスキルに一票、登場人物の中でわたしの大好きな、心やさしい19歳のゲイの美容師・ルディに一票、彼のどこが…と聞かれたらここ。ルディが母親の髪を整えながら「会うと喋れないのなら手紙がいい」と勧める。ルディ「彼にラブレター、書けよ」母「おかしいでしょ。作家に手紙、書くなんて」ルディ「ハゲの美容師もいる」(爆笑)。始めから終わりまでハートフル、かつ大ヒットした映画に、でもこういうのは気がひけるのだけど、オデットみたいなしっかりした女には、バルザンのような頼りない男がひっつくようにできているのかしらね。というか、女に頼る男と頼られるのが好きな女って、男女の典型のひとつなのでしょうか▼バルザンの天敵の批評家はこうきた。「文学として破綻している。物語も人物も文体も三拍子揃って無様だ。その点ではまさに天才的だ。内容は陳腐そのものでとても小説とは呼べない。いますぐこの本(ト手に取り)ゴミ箱へ」とテレビ番組で解説する。まさに死刑宣告。バルザンがマア、一度傷つくと再起不能になる男で、ショックで引きこもり。そこで自分のファンだという主婦のオデット(カトリーヌ・フロ)からもらった手紙を読み返す。「わたしの人生は最悪でした。ある日あなたの本を読みました。本は教えてくれた。惨めな人生にも喜びや愛や笑いがあると。わたしのような平凡な人間にも取り柄があると。自尊心が生まれ、自分を愛せるようになりました。オデット自身になったのです」心打つ手紙。じ〜んとする。そこで気を取りなおしたバルザンはオデットの家を訪問し、しばらく置いてくれというのだ。オデットは快諾する。え〜。ファン心理につけこんでよく図々しく押しかけるわね。またそれを喜んで引き受けるのもどうかしている…腹をたてても仕方ない、ここはいちばんルディのようにやさしくなろう。バルザンという男が、とめどなくつけあがる男なのよ。ノーベル文学賞は作家のあこがれだとバルザンが言う。オデットは「もらうにはどうするの? どこに申し込むの?」と、無邪気にきく。バルザンをみていると、こういう男がひとつ間違うとDVに走るのではないかと思うくらい内豪外柔である。自分にやさしい相手に強く厳しくわがままで、自分を攻撃する力のある相手にはからっきし弱い。勝てる勝負しかしないというのが、聞こえはいいが、残虐性と紙一重だ▼オドロキは、バルザンが最愛の息子フランソワを連れ、旅先のオデットを訪ねたことだ。オデットの夢は海がみたいことだ。「地中海か」とバルザンがきくと「地中海? ベルギーにも海があるわ。もっと地味で控えめな北海が」。で、彼女は娘と息子を連れ、北海のブリッケンブレックに来ていた。灰色の波高い荒れた海岸。人一人いない。バルザンが言うには「君のそばなら息子にレッスンできると思って。幸せのレッスンだ」…オデットのそばにいたいならそういえばいいのに、いちいち息子をダシに使うところがいやらしい。バルザンは元妻とよりを戻すかとみえたり、オデットが倒れて入院したり、トラブルがいくつかあり、そうそう、浜辺に材木をかついだやせた男は、オデットが「イエスさま」と呼んでいた男で、彼はオデットの目の前をふらふら歩いて行く。オデットの心がささくれだっているときに彼の姿は見えない。オデットが疲労困憊しているときはよろめいてあらわれる。一種の心象ですね▼外からみたら金も名声も夢もすべて実現させたと思えるバルザンの心の中はこうだった。「親の顔を知らず、孤児院で育ち、他人の家を渡り歩いた。世間を見返すため懸命に勉強し、金と名声を手に入れ、美人の妻に脚のスラリとした愛人、田舎には別荘。陳腐さ。何を手に入れても幸福じゃなかった。自分ではなく他人の幸福を生きてきたからさ」。オデットはそんな彼を宝物だという。「わたしのようにロクに本も読まず教養のない者を夢中にさせた」。バルザンは「ぼくの幸福は君次第だ」とオデットに。「みんなまちがった場所で幸せをさがす。幸せになるには自分を受け入れることだ」。ということはヨリを戻したと思えた元妻とは、そのままバイバイなのね。どこまでも調子いい男だわ。オデットの尻に敷かれるのは時間の問題だけど、おしなべて恐妻家のほうが家庭はうまくいくわ。お幸せに。そうそう、ルディのイケメンのパートナーにもよろしく。

 

 

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