女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「ベストコレクション」

2015年11月18日

特集「星の降る夜は/ベストコレクション」④
LIFE!/ライフ(2014年 ファンタジー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ベン・スティラー

出演 ベン・スティラー/ショーン・ペン/シャーリー・マクレーン/クリステン・ウィグ

シネマ365日 No.1571

無名の男 

特集「星の降る夜は/ベストコレクション」

だれがなんと言おうと、どんなにみっともなく見えようとかまわない、もうラストで涙がとまらなかったわ。世界中に愛読者を持ち、時代の先端を走っていた写真誌「LIFE」が、紙媒体の衰退とともに休刊に至る。会社は「オンライン/LIFE」の創刊を決める。その前に紙媒体として最後の特集「最終刊」を発行することになった。表紙は、長年同誌に作品を発表してきた世界的な写真家、ショーン・オコンネルが自ら「最高傑作」と自薦する写真だった。彼は写真管理部の責任者ウォルター(ベン・ステラー)に、フィルムを送り「25番」を使ってくれと指定してきた。彼はデジカメでは撮らないのだ。自分の写真を的確に扱ってくれたウォルターに敬意を表し、記念品として革の財布が同封されていた。ウォルターが開いてみると財布の内側に「LIFE」社のスローガンが彫り込まれていた。「世界を見よう/危険でも立ち向かおう/壁の裏側を覗こう/もっと近づこう/お互いを知ろう/そして感じよう/それが人生(LIFE)の目的だから」▼ところが「25番」だけがないのだ。人員解雇に入った会社は整理会社のテッドを招き、社員をつぎつぎカットしていった。日の当たらない地味な持ち場にいたウォルターが生き残れるはずもなく、テッドは見るからに小男の、冴えない中年男を揶揄中傷し、早く「25番」を現像しろと急かす。写真管理者が写真を失うのは最大の失策だ。テッドは罵声を浴びせ、違う写真でいくというが、ウォルターは抵抗する。「ぼくは勤務して16年、写真を失ったことは一度もない」。所在がわかるのはただひとり、撮影者のオコンネルだけ。彼は世界中を旅して撮影しているから、どこにいるかわからない。ウォルターの同僚シェリル(クリステン・ウィグ)の協力で、今グリーンランドにいることがわかった。ウォルターは飛び出す▼シェリルはバツイチのシングルマザーだ。ウォルターは彼女が好きだ。彼女が会員になっているパートナー探しのサイトに自分も登録するが、書き込むエピソードがひとつもない。彼は子供のころ父親を亡くし、母親エドナ(シャーリー・マクレーン)と女優志願の妹オデッサをかかえ、一家を支えコツコツ「LIFE」で勤めてきた。内気で、白昼夢のように空想にかられる癖がある。空想のなかで彼は勇敢な冒険家であり、シェリルの危機を助けるスーパーマンだ。ともあれ彼はグリーンランドに到着した。あれはてた雪原にあるカラオケパブに入り、オコンネルがここに来たはずだと尋ねる。だれもいないステージで歌っていた大男が、彼はもういないと教え「そいつは沖の漁船に乗った、これから無線機を届けるがお前もいっしょに来い」泥酔したパイロットの操縦に、恐れをなしたウォルターは断る。ヘリのプロペラが回りだしたとき、ウォルターはシェリルがデヴィッド・ボウイの「トム少佐」を歌う幻を見る。「さあ、勇気をだして船外(宇宙船の船外)に出る時がきた…」ウォルターは、彼女に背中を押され、ヘリに飛び乗るのだ▼オコンネルを追って、25番のフィルムを追って、ウォルターはグリーンランドからアイスランド、そしてヒマラヤへ。ヘリから海へジャンプ、サメに追われ漁船に引き上げられ、アイスランドでは火山まで170キロを走破、ヒマラヤのノシャクムに登った。雄大な尾根をひとり歩く孤影が美しい。オコンネルは氷雪のかげでユキヒョウを撮ろうとしていた。ショーン・ペンがドヤ顔でいきなり現れます。「静かにしろ。ユキヒョウだ。尾根にくる。幽霊ネコだ。絶対に姿をみせない。美しいものは注目を嫌うのさ」。ファインダーをのぞいていたオコンネルが手招きした。ウォルターが除いたレンズは、ユキヒョウの神秘なまでの全身を捕らえていた。オコンネルはシャッターをきらない。「撮らないのか」とウォルター。「時々ね。もしそれが好きな瞬間なら、カメラにジャマされたくないと思う。その一瞬を味わう。今この時だ…ああ、行っちまった」渋いわ〜ペンさま。なんでシャーリーズ・セロンは別れたのでしょう▼肝心のフィルムは「君の尻の下にある」とオコンネルがいうではないか。「?」「財布だよ。あの中にはさんだのだ。中を見ろとメモがあったろう。財布はどうした。捨てた? 傷つくなア。美しい写真だったのに」ウォルターはやけくそになって記念の財布をゴミ箱に放り込んだのだ。もう「25番」はない。家に戻ったウォルターは家賃も払えずこれから職探し。父の形見のピアノを売る。「ごめんな、母さん」「わたしたちは大人よ、事情はわかっているわ」。小切手を受け取ったウォルターに母親は財布を差し出す。「これ、どこに」もったいない精神の母親は、ゴミ箱から新品の財布を拾っていたのだ▼最終刊の輪転が回るまであと2日。ウォルターは整理進行中の会議室に入る。冷視をものともせず「これがオコンネルの25番のネガだ。これが〈LIFE〉の真髄だ。ヘイ。社のスローガンはなんだ」テッドが口の中でモゴモゴ言う。「ちがう。それはマグドナルドだ。君は部外からやってきて社員のクビを切った。彼らはLIFEのスローガンを信じ、命がけでLIFEを作った人たちだ。君は上の命令に従っただけだろうが、イヤな奴にはなるなよな」。「LIFE」の歴史を閉じる最終刊発売の日がきた。ウォルターはシェリルと町を歩いている。「で、どんな写真かネガを見たの?」「いいや」「今日発行のはずよ」ふたりは足をとめる。店頭のポスターにオコンネルの最高傑作が表紙となっていた。キャプションにこうある。「これ(LIFE)を作ってきた人々に捧げる」写っている写真は、ルーペで無心にネガをチェックする、無名の写真管理人ウォルターだった▼監督はベン・スティラーです。例によって(くそゥ、とことん、いいカッコしやがって)といえばいえますが、男たちの意地とやさしさ、心憎いばかりのさりげなさ、仕事への情熱と孤独、それらを誇張せず、しっくりと、でも見せ場充分に描いた手腕を称えるべき。

 

 

Pocket
LINEで送る