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特集「ベストコレクション」

2015年11月24日

特集「星の降る夜は/ベストコレクション」⑩
ネスト(2015年 サスペンス映画)

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監督 ファンフェル・アンドレス/エステバン・ロエル

出演 マカレナ・ゴメス/ナディア・デ・サンティアゴ

シネマ365日 No.1576

あざやかなデビュー 

特集「星の降る夜は/ベストコレクション」

ヒロインである殺人犯の姉が哀れで、わたし、とても弾劾する気がしないわ。罪を憎んで人を憎まずとは、こんな事件のためにある言葉ではないかしらね。ありふれた三角関係の意匠をまとって映画は始まります。姉モンセ(マカレナ・ゴメス)は洋服の仕立てをして生計をたてている。妹(ナディア・デ・サンティアゴ)は18歳。モンセをひいきにする夫人が、裁縫の腕がいいのだから店をだせばと勧める。モンセには持病があるらしく「主人は治るといっているの。治療できるのよ。試してみたら。引きこもりはダメよ。妹だって結婚して家庭を持ったら…」。モンセは「まだ子供です」とさえぎる。秘密、病気、不安、そこへ男が現れモンセを嘲笑する。あとでわかるがこれは父親の幻想である。ろくな父親ではないと察しがつく。緊張感がミステリアスな期待をかきたてる。ファンフェル・アンドレスとエステバン・ロエルは、これが長編第一作という監督だ。伝統のスパニッシュ・サスペンス、充分な底力を感じさせるすべりだしです▼母親が早くに死に、父親は行方不明、モンセが母親代わりになって妹を育ててきた。モンセは広場恐怖症で外出できない。妹は勤めている。ボーイフレンドができたらしく、家の外で立ち話をするのをモンセが窓からみかけ、手のひらを鞭で打ち、折檻する。ある日アパートの上階の部屋に住む男カルロスが、階段から落ちて脚を折り、モンセの部屋に転がり込む。モンセは甲斐甲斐しく手当し、ここにいてくれてもいいと言う。妹はこっそり男の部屋に行き「姉は普通に見えるけど、ちがう、気をつけて」と忠告する。始終思いつめたようなモンセの言動が謎にみちている。監督はそれをゆっくり解きほぐしにかかる。幻の父親の意地悪さ、妹の反抗、男に傾くモンセの恋心。妹はモンセの隙をみて男と話すようになる。カルロスはわけあって逃亡しようと部屋を出たときに転げ落ちたという、運の悪い男である。モンセは男を家で飼い殺しにしたいらしい。男にモルヒネを与え、折れた脚は添え木を当てたままで、変色している。壊疽でもおこしそうだ。妹は「あなたは姉に誘拐されたのよ。死ぬまで姉から離れられないわ」と宣告する▼マカレナ・ゴメスの演技が素晴らしい。彼女にとってやっとみつけた現実社会との接点がカルロスだった。そこへカルロスの妻が刑事を伴って現れる。結婚式直前にカルロスが逃亡したというのだ。行方を探している、心当たりはないか。モンセはもちろん「ない」と答える。妹は妻にカルロスは自分の部屋にいると教えた。やってきた妻をモンセは撲殺する。血の海の現場を目撃したカルロスは驚倒。しかし妹が帰宅したとき姉は普段通り、カルロスはベッドで眠り、犯行の痕跡も死体もどこにもなかった。服を注文にきた医師の妻と姪は、裁縫室であまりリアルなマネキンが服をみているので触れてみた。人肌のようになまなましく、服を取ると首がちょん切られ、切断のあとは血痕も生々しい。悲鳴とともにテーブルの帽子を弾き落とすと、その下にあるのはカルロスの妻の生首だった。絶叫が響き渡る…▼妹が帰ってきた。モンセは話があると妹と差し向かいになる。「あなたは18歳。もう子供じゃないと認めなくては。つらいけど、話すわ」。映画は静かなクライマックスを迎える。「父さんは愛の病だったの。母さんの死後、人が変わり家に引きこもり、すべてに母さんの面影を見た。とくにどんどん似てくる長女に。正気を失ったのよ。娘への愛と妻への愛の区別がつかなくなり、わたしと母さんを混同した。何年間も毎晩犯されたわ。ある夜、あなたの部屋に行くと父さんがいたの。おぞましかった。今度はあなたが犯される。怒りのあまりあることを思いついた」。姉はまずそうに料理を喰う父の皿に殺鼠剤をまぜた。血を吐いて死んだ父をベッドに寝かせ「腐乱してきたので隠すことに」…さてこの妹であるが「なんてことをしたの。どこに隠したの」と怒り出すのだ。許しをこうモンセに「警察に話して父さんを探してもらうわ」。ひどい妹だよな〜。姉は父殺しにはちがいないが、また無関係な女性3人を殺した殺人犯にはちがいないが、こんな親父、100回殺されたったあたりまえだろ。耐え難いトラウマのために、社会から孤立し、モルヒネが手放せなくなったモンセの症状はあきらかに神経疾患の域に入るだろう。さらにいうなら姉のおかげで、妹は性的虐待から逃れられたのではないか▼妹はカルロスの部屋に駆け込み、連れて逃げようとして「アッ」。彼の脚はベッドに縫い付けてあったのだ。妹は糸を切り、カルロスを運び出そうとする、そうはさせないとモンセが襲いかかる、妹は大きな裁縫鋏で姉の腹を刺す。虫の息になった姉が妹に言う。「父さんが撮った、母さんとあなたの写真があるの」。ありえない、自分を産んで母は死んだのに…姉は隠し場所を教える。壁の隠し棚の箱にあった写真。生まれた幼い女の子を抱く母は、モンセだった。父との間でモンセは娘を産み、妹として育て、娘を犯そうとする父を殺したのだ。最後まで緊迫はたるみません。最近ではよく「スペインが誇る天才」という枕詞がつく、アレックス・デ・ラ・イグレシア(「気狂いピエロの決闘」)が製作を担当し、若い才能に期待をよせています。

 

 

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