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特集「ザ・クラシックス」

2015年12月1日

特集「ザ・クラシックス3」①
ウエストワールド(1973年 SF映画)

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監督 マイケル・クライトン

出演 ユル・ブリンナー/リチャード・ベンジャミン

シネマ365日 No.1586

B級のA級ってこれね

特集「ザ・クラシックス3」

ロボットの、黒装束のガンマン(ユル・ブリンナー)が最後に黒焦げになり、空き缶みたいに転がって息絶え(?)ますね。彼は硫酸ぶっかけられたり、何度も、何度も銃で蜂の巣にされたりします。大昔この映画を見たときロボットが可哀想で仕方なかった。コンピューターの極小値の誤作動が徐々に大きくなり、プログラムにないはずなのに人間に刃向かい、傷つけたり殺したりする。制御不能になったロボットは、今まで自分を平気で破壊し、ガラクタ扱いしてきた人間に復讐する。制御室にいるスタッフは、部屋を密閉されコンピューターの前で窒息死する。生きている人間はマーティン(リチャード・ベンジャミン)と彼を殺そうとするガンマンだけだ。ガンマンは無表情に、センサーで感知した体温を追ってマーティンを追撃する。「ターミネーター」のさきがけをなしたマイケル・クライトンの初監督作品にして傑作だと思う▼日本人はロボットが好きだった。江戸時代から綿々と続く「からくり」の伝統は緻密で精巧で美しい技術の粋だ。いま見てもほれぼれする。もうひとつロボット工学が時代の先端をいくにつれ明らかになったことは、なぜ日本人のロボットは「人型」が多いのか。「インターステラー」のロボットは無味乾燥な四角い箱型だった。いくつか理由はあるだろう。欧米では「人を創ったのは神であり、同じ行為を人間がしてはいけない」というキリスト教の影響による抵抗感があるのかもしれない。二足歩行のロボットは断然日本がリードしている。日本人は動物型ロボットも好きだ。富士通が創った子グマ型ロボットは、ちょこんとデスクにすわり、人の目をみてさまざまな反応を返す。これも「からくり」の伝統だろう。江戸のからくり職人は、顔は顔師が、着物は胴師が、それこそ精魂込めて作り込み、表情豊かな人形にきれいな着物を着せ、その人形はお茶を運び階段を降り、動作のひとつ、ひとつに作り手の愛情がこもっていた。欧米のオートマタは、たとえば「鑑定士と顔のない依頼人」では、精巧ではあるがどこまでも無機質なメカニックな美しさであって、日本の「からくり」にある美意識とは異なる▼日本人のロボット好きは漫画にも如実だ。1946年(昭和21年)発行された少年雑誌「少年」に登場した手塚治虫の「鉄腕アトム」は、大袈裟ではなく団塊の世代以後の、日本人のロボット観を決定したと言ってもよい。アトムという「科学の子」は技術一辺倒ではなく「心やさしく正しい」のである。アトムがロボット世界の秀才でありハイテクの結晶なら、アトムよりやや遅れて発行された前田惟光の「ロボット三等兵」は、ブリキでできてドジもふむ、庶民を代表するロボットだった。続く「鉄腕28号」は、操作する人間によって悪にもなれば正義にもなる、二重性を備えた無敵のメカである。こういう精神的土壌で日本人は独自のロボット感を培ってきた▼本作では広大な砂漠のなかのレジャーランド「デロス」に、帝政ローマや13世紀ヨーロッパの中世や、西部開拓時代のアメリカの3エリアがある。観光客は好きな1エリアを選びその世界独特の冒険とスリルを楽しむことができる。1日1000ドルという豪勢な遊びだ。マーティンとジョンは西部の「ウエストワールド」を選び、拳銃を腰に駅馬車で町に到着した。酒場に入ると黒シャツの無表情なガンマンが隣にたち、因縁をつけケンカを売る。マーティンは拳銃を抜きガンマンを撃ち殺す。マーティンの拳銃はロボットを撃つことはできるが、ロボットの拳銃は体温に感応すれば弾は発射されないようできている。また客同士が撃ちあっても相手を傷つけることはできないように制御されていた。射殺されたガンマンは地下のコントロール・センターに運ばれ、技術者たちが配線を変え、ユニットを交換し、機能調整する。しかし少し前からおかしな故障が増えていた。周辺機器の小さな故障ではなく、中央ユニットの故障が増えていた。湿度制御や恒常性に問題があり修理しても故障率があがっている、故障のパターンに類似性があり伝染病が広がっていくのにそっくりだと技術者たちは報告した▼よけいな説明なしに、ロボットが憎しみを持った、とあっさり結論づけているから進行がテキパキしている。人間がさんざんロボットを傷めつけるものだから、ロボットの反逆も(無理ない)と思ってしまうのだ。一言でいえばユル・ブリンナーの目に宿る憎しみは、人間の傲慢と冷酷への復讐なのだ、ついそんなふうに感情移入してしまったのはわたしだけか。

 

 

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