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特集「ザ・クラシックス」

2015年12月5日

特集「ザ・クラシックス3」⑤
抱擁(2002年 恋愛映画)

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監督 ニール・ラビュート

出演 グウィネス・パルトロー/アーロン・エッカート/レナ・ヘディ/ジェニファー・イーリー

シネマ365日 No.1590

だましの文学史 

特集「ザ・クラシックス3」

英文学史におけるヴィクトリア朝時代の詩人アッシュと、女性詩人ラモットの恋を軸にもうひとつの恋が現代に生まれる、というのがテーマ。有名な愛妻家だったアッシュに恋人がいた、詩人のラモット(ジェニファー・イーリー)だ。彼女は画家である女性の恋人ブランチ(レナ・ヘディ)と同棲、ひっそりと暮らしていた。ヴィクトリア時代とすれば破天荒な生き方だった。知人の家でラモットに出会ったアッシュが一目惚れ、熱烈なラブレターを彼女に送り、きらめくような文章にラモットは虜となる、という前提のもとに映画は展開する▼アッシュ没後100年記念展がロンドンで催されている。アッシュ研究のためにアメリカから来た特別研究員ローランド(アーロン・エッカート)は、大学の図書館でアッシュの蔵書にはさんであった、古い手紙の下書きを見つける。桂冠詩人にして高邁な道徳家だったアッシュに女性がいた! 当時彼の書いた愛の詩は妻のエレンに捧げたものというのが定説だった。ローランドは資料を調べ、手紙の相手がフェミニズム詩人として知られるラモットだと結論する。ローランドはラモットの生涯と作品の研究家であるモード・ベイリー博士(グウィネス・パルトロー)に会い、協力を得て本格的な調査に乗り出す。同時代を代表する男女ふたりの詩人が不倫の関係だったとわかれば文学史上のビッグニュースだ。しかもモードはラモットの妹のひ孫にあたるのだ。古い彼女の家にはラモットの資料がまだ眠っているにちがいない。ふたりの調査は俄然熱をおびる▼映画の二本の大きな流れの一本は、100年前のラモットとアッシュの恋、もう一本は現代のローランドとモードの恋。アッシュとラモットはふたりだけで旅に出て1週間を過ごし、その直後に別れ再び会うことはなかった。唐突な別れに疑問を持ったふたりは、ラモットが行ったフランスの妹の家にまで行く。ラモットは妊娠していた。彼女は娘を産み、妹の子として育てる。この子がモードの曾おばあさんだ。一方アッシュの家では貞淑な妻が「わたしはあなたに子供も産んであげられない」と詫びている。夫はやさしくなぐさめる。ラモットのパートナーであるブランチは、恋人の変心を知り、ラモットにきたラブレターを隠すがラモットとよりは戻せず、悲嘆して入水自殺する。ブランチになるのが「四角い恋愛関係」のレナ・ヘディ。ラモットに扮したジェニファー・イーリーは若いときのメリル・ストリープそっくりだったが、ふたりのゲイ関係はラモットの心変わりで一方的に破綻。現代のふたりは多少のいきちがいはあるが、最後はめでたくゴールイン。ローランドはモードに「君はいつも髪を束ねているけど、このほうがいいよ」といいながらパルトローの金髪をほどくのですけどね、全然似合わないのよ、パルトローの愛嬌のない容貌は、おろそうとあげようと、たいして影響を受けないのね▼きれいな映像がさ〜と流れるような映画でした。詩人ふたりの愛の奇跡を追っていくプロセス、自分の屋敷で古手紙をみつけたローランドとモードの興奮とか、新発見の手紙でひともうけしてやろうというオークショニアらが入り混じり、ミステリアスな要素がそれなりに引っ張っていきますが、善人にばかり焦点をあてているからきわめて彫りが浅いのよ。詩人たちだってそれぞれのパートナーを裏切って、ましてひとりは死んじゃったのだからね。すみません、悪かったわ、で済むのかよ。それに男の妻もできすぎているわ。この時代の産婦人科の医療レベルってどの程度だったか知らないから、こういえるかどうかわからないのだけど、不妊の原因は女だけにあるって決まっていたみたいな言い方だわ。パルトローが才色兼備の文学博士だ。頭のよすぎる元祖ツンデレってところね。アーロン・エックハート? 彼じゃなくローランドという男性に興味がもてない。アルバイトに近い身分で、あちこちの重要資料に好きなだけ当たれるというのも、いくら担当教授の受けがいいからとしてもできすぎ。蔵書のページの間に著者肉筆の手紙が挟んであって、100年間だれの目にもふれなかったとしたら、そんな人気のない詩人が死んだからって、没後100年記念行事をロンドンのド真ん中でだれがやるのよ。ばからしい。基本的にまやかしの世界のロマンスです。いかにも実在したかにみえる詩人ふたりは架空の人物。彼らにともなうあらゆる資料、文献、詩の引用は原作者アントニア・スーザン・バイアットの創作です。結局この人のだましのテクがいちばんすごい。

 

 

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