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特集「ザ・クラシックス」

2015年12月12日

特集「ザ・クラシックス3」⑫
ガラスの墓標(1970年 犯罪映画)

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監督 ピエール・コラルニック

出演 セルジュ・ゲンズブール/ジェーン・バーキン

シネマ365日 No.1597

セルジュ&ジェーン 

特集「ザ・クラシックス3」

恥も外聞もない映画とはこれをいうのね。それが「新しい愛のあり方」だって、歯が浮くわ。殺し屋のセルジュ(セルジュ・ゲンズブール)は仕事を終え、ボスといっしょにアメリカから帰仏する機内で、大使の娘だとかいうジェーン(ジェーン・バーキン)に一目惚れ。だいたい役名と本名がいっしょだとは、劇中のふたりとは「ぼくたち・わたしたちのことです」と言っているようなものでしょ。当時セルジュとバーキンは同棲中のラブラブだった。18歳の歳の差婚だ。ジェーンの隣にすわりこんだセルジュは大きな鷲鼻、ギョロ目に汚らしい無精髭、どうかした拍子、田中邦衛にそっくりだ。なにをしているのかときかれ「ぼくはただのさすらい人。家にも旅にも疲れてね」だって。キザもここまでくるとおぞましいわよ▼でも驚いちゃいけない。受けるジェーンがまだ上をいく。「わからないわ、そういうこと、わたし想像できない。苦労らしい苦労をしていないから。わたしのこと、知りたい?」「ちょっとだけ。幸せ?」「もちろん」。これが初対面の大使令嬢と、チョイワル中年親父の会話か。ばかばかしいけどそうだとしよう、でないと前に進まないからね。空港についたセルジュとボスは敵マフィア一家に待ち伏せされ、森に連れ込まれる。参考のためにいうと原題は「大麻」だ。粗筋の基本闘争は、ブツの取引をめぐるイザコザというところだろう。森小屋の乱闘でボスは射殺、セルジュは肩に傷を受け、よろめきながら車で逃走する。彼はファーを着ている。ひとつも似合わないのに(おれこそはセルジュ・ゲンズブールだ)という自意識のかたまりで、肩で風を切るのだ。不思議なもので、その妙なファッションをみていると、あらそう、ちょっとヘンだけど似合っているかもね、という催眠状態になってしまう▼意識もうろうと運転するセルジュが、車を止めたところへジェーンが高級車を横付けする。ケータイもない時代にいつのまに、どうやって連絡をつけたのだ。テレパシーか。先へ進むしかない。ジェーンの家は豪邸だ。パパ大使らは外国らしい。広い大邸宅にはジェーンひとり、まるで察したように執事もメイドも姿をみせないとは、なんて都合いいのだ。ジェーンはテキパキと傷の手当をし、セルジュが指示するワケあり患者専門の、あやしげな医者を呼ぶ。お定まりの「カラン」という、弾丸をトレーに落とす音とともに手当は終わり、つぎなるシーンでふたりはもうベッドにいる。いくらなんでもちょっと早すぎない? ジェーンお嬢さまはあっというまに全部脱いじゃうし。この映画ボカシがないから、ジェーンのヘアがきれいに映るわ。アメリカからセルジュの相棒ポールがきて豪邸を隠れ家とする。ジェーンは「わたしはとことん行くの。ポールといっしょにここに住めばいいわ」ポールはセルジュが女にのぼせてしまったのがおもしろくないが、とりあえず、ふたりにはボスの敵討ちという大仕事が残っている▼いざ男二人はお仕事に、というとき、なんと、ジェーンまでいっしょについてくるではないか。このお嬢さん、ほかにすることはないの? 大学は? 仕事は? パパは大使だっていうのに、娘が殺しを手伝っていていいのかよ…いいらしいのだ、それが新しい愛の在り方らしいのだ、ジェーンとセルジュは車のなかで発情し、ところかまわずあえぎ始めるものだから、運転していたポールは、車を止めて外にでてしまう。無理ないわ。ネコならタライで水ぶっかけるところだけど。こういう「待ったナシ」とか、ジェーンがベッドで「裸のマヤ」そっくりなポーズで横たわっているとか、場所がどこであろうとジェーンがキスしたがるとか…惚れたのだから仕方ないとはいえ、こういう行儀の悪いことを「明日しれぬ愛」と呼ぶのでしょうか。セルジュは足を洗いたいという。ジェーンを知って新しい人生にふみだしたいのだそうだ。ポールは組織に訴える。事情を知っているやつを生かしておけん、お前が殺せ、となり、ポールはセルジュの刺客となる。森のなかを逃げるセルジュとジェーン。車を運転しながら、左手の拳銃でポールはセルジュを射殺する。森に響くジェーンの絶叫。ポールは射撃の名手なのよ。スナイパーといってもゴルゴ13みたいに苦みばしった男じゃなく、気のいいヤンキーの兄ちゃんみたいなのだけど。チグハグだらけにもかかわらず、セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの、限りない自己陶酔につきあえる方、どうぞ。

 

 

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