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特集「ザ・クラシックス」

2015年12月14日

特集「ザ・クラシックス3」⑭
エステサロン/ヴィーナス・ビューティ(1999年 ファンタジー映画)

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監督 トニー・マーシャル

出演 ナタリー・バイ/オドレイ・トトゥ/マティルド・セニエ

シネマ365日 No.1599

やるせなくセクシーな女 

特集「ザ・クラシックス3」

女優の使い方のうまいトニー・マーシャル監督です。「逢いたくて」で彼女のコマはカトリーヌ・ドヌーヴでした。本作ではだれか。ナタリー・バイです、オドレイ・トトゥです。特にこのとき50歳で40歳のヒロインを演じた、ナタリー・バイから匂う「大人」の空気が、断然ス・テ・キ。ヨーロッパ映画を見ていて、ハリウッドの女優と一線を画する違いが、この「匂い」なのよね。いいとかどうとか、ギャラの格差とか、関係ないの。存在からでるものとしか言いようのない、差異なのです。演技がうまいとか最高とかいうなら、キラ星のような大女優がハリウッドには何人もいるわ。でもね、たとえばジョディ・フォスターがフランス人の監督のもと、フランス映画に主演して、流暢なフランス語を話したとしても、ドミニク・サンダとはちがうのよね。それは人物がちがうから、人間がちがうから、生まれ育った国がちがうから、本質がちがうからとしか、いいようがないでしょう▼ナタリー・バイはエステサロン「ヴィーナス・ビューティ」のエステシャン、アンジェルです。キャリアと技術からすればアンジェルはいつでも独立できる。オーナーのナディーヌもそれをすすめるが、アンジェルの現在は、目下人生の低周波期なのだ。彼女は信じていた恋人が浮気し、彼に発砲して顔に傷をおわせた。別れてもそれがシコリになって男と恋愛関係になれない。カフェやレストランで、見知らぬ男に声をかけ行きずりの情事をもつだけだ。「ヴィーナス」には3人のエステシャンがいる。元看護師のサマンタに、見習いの20歳のマリー(オドレイ・トトゥ)。腕のいいアンジェルのご指名は多い。美の殿堂といえばおおげさだが、美しくなりたい女のホンネを、この映画は女性監督ならではの、ユーモラスな描写でみせてくれる。トニー監督は実際のエステサロンでの出来事をもとにしたそうだ▼婚約者がいるにもかかわらず、若い彫刻家アントワーヌがアンジェルに一目惚れした。アンジェルにあしらわれてばかり、ひとつも踏み込めないでいたアントワーヌは、思い余って策を講じ、客になって店にくる。店にはいつも変わったお客が来ている。20歳のマリーにまとわりつく60歳の元パイロット。チップをはずむのでマリーは上機嫌だが、アンジェルは信用しない。様子をうかがいながら「マリーを連れ出すつもりよ。断らせるわ」とアントワーヌにささやく。アンジェルからみると、マリーはあぶなっかしくて仕方ない。いつも男をとりかえているサマンタは故意か偶然か、飲み過ぎた薬のせいで病院にかつぎこまれる。肌を焼きにくる女性は素っ裸の上にコート一枚、ガラス張りの店内でコートを脱ぎ、店内をうろうろ。もちろん外からはヘアまで丸見えだ。アントワーヌには、ピンクとブルーのコーディネートで統一された「ヴィーナス」が、まるで「不思議の国」だ。アントワーヌとアンジェルは、マリーとおじさんの熱い現場を目撃した。ふたりとも熱波にあてられその気になり、恋の波に乗りきれなかったアンジェルも、とうとうさらわれてしまう。ふたりは相思相愛。これでめでたく一件落着するはずだったが、別れたアントワーヌの元婚約者が、嫉妬のあまりストーカーとなり、男を付け狙っていた。とはいえ、おもちゃみたいなピストルで笑っちゃう。銃口を定めバンと発砲したものの、店のネオンを壊しただけ。アンジェルとアントワーヌはしっかりだきあってエンド。女? どっかへ行ったわね。サマンタはオーナーとケンカして大晦日に店を辞めた。マリーはおじさんとどこまでかわからないが、いまのところやっていくだろう。アンジェルはオーナーが提案する「ヴィーナス」の姉妹店「アフロディティ」の責任者を引き受けるかもしれない。精神的に充実したアンジェルは、人生への取り組みも変わった。「ヴィーナス」にも新しい年がくる。下手打つとシュークリームみたいな味付けになる物語を、苦味のきいたナタリー・バイの演技が抑えています。女40歳。若さが日に日に衰えていく。あきらめと虚しさを同居させ黙々と生きている女。若いエステシャンにアドバイスもするが、いちど助けたら「つぎは自分でやって」とかかわらない。孤独でやるせない女。かかえている切なさがセクシーにみえる、そんな女優です。

 

 

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