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シネマ365日

2015年12月22日

特集「それいけ、アニマルフェスティバル4」⑦
WATARIDORI(2003年 ドキュメンタリー映画)

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監督 ジャック・ペラン

シネマ365日 No.1607

渡り鳥へ、限りないリスペクト 

特集「それいけ、アニマルフェスティバル4」

3年間、約1万5000時間を超軽量飛行機で飛んで撮影したとジャック・ペラン監督は言っている。鳥のそばをいっしょに飛ぶのだ。渡り鳥は一年後、必ず同じ場所にもどる。数千キロに及ぶ「渡り」の旅は、危険であり、途中命を落とす鳥も少なくない。この映画の背骨を貫いているのは、飛ぶことが生きることであり、戦いなのだという鳥たちへの深いリスペクトだ。無理にドラマティックにせず、鳥の表情を誇張してとらえず、それでいて、人間の長い、長い憧れであり、これからも憧れであり続けるであろう「空からのなにか」を教える。ニューヨークのハドソン川からは自由の女神が見え、パリのセーヌ川をとぶときはエッフェル塔が見える。砂漠に燃える太陽、みはるかす海の入日をかすめていく鳥影。ここはシベリアのツンドラ、長い首と首をからめてのけぞる優雅かつエロチックなツル。大きな羽、力強い背筋、肉感的な胴部、美しい編隊を組んでとぶオオハクチョウ。彼らの飛翔する姿は、あるときはダイナミック、あるときはエレガント、でもそれは生と死に直結している▼渡り鳥とひとことでいうが、本作に登場する鳥たちが、昼も夜も飛び続ける移動距離は、それだけでドラマだ。春の北半球の各大陸から、渡り鳥は生まれた北極の地をめざす。彼らは太陽と星を目印に移動する。コースと目的地を絶対に間違わない。地球の磁場を感知できるからだ。カオジロガン2500キロ(西ヨーロッパからグリーンランド)。オオハクチョウ3000キロ(極東からシベリアのツンドラ)。インドガン2500キロ(ガンジス一帯から中央アジアステップ地帯)。タンチョウヅル1000キロ(日本からシベリアのタイガ地帯)、ハクトウワシ3000キロ(アメリカ西部からアラスカ)、カナダガン3500キロ(メキシコ湾から北極圏)、ハクガン4000キロ(同)、カナダヅル3500キロ(アメリカ大草原から北極圏)、キョクアザサシは北極から南極へ地球を半周して2万キロを飛ぶ。アオガンは東ヨーロッパを横断する。噴煙をあげる工業地帯。駅の鉄路に溜まった廃水で水浴びする鳥たち、すぐそばをトラクターの大きな車輪が通る。コールタールの泥地に脚をとられ、羽が汚れて重くなり、飛び立てなくなった鳥がいた(撮影班はあとで助けてやったのだろうな)。北ヨーロッパから南アフリカへたどりついた数百万羽の鳥のなかには、たどりつけなかった鳥もいる。砂漠の砂に横たわる骨、羽が折れむらがるカニに生きたまま食いつくされる鳥、南極では生まれたばかりのペンギンの子が、大きな鳥に捕食されていた▼モモイロペリカンは、アフリカ大陸を横断する。体が大きいから飛ぶ姿も悠揚としている。鳥の群れはエサを求めて飛び続ける。ワタリアホウドリは南極一帯にやってくる。この海域は波が高く荒く、強風が吹く。数年も南極を回ってやっと陸地にたどりつく鳥もいる。イワトビペンギンは南大西洋の波にのって、オウサマペンギンは、南緯40〜50度の強風海域を移動する。荒海を前に最果ての岸辺に立つペンギンたち。「ここに陸果て、海始まる」光景はここにもあったのだ。

 

季節は再び春になった。ここはフランスの田舎。小川のほとりに少年がいる。とびたつガンの群れのなかで、網にからまった鳥が一羽いた。少年は鳥を出してやったが、網の一部がちぎれ、脚に巻き付いたまま、ガンはとびたった。そして春。汚れて真っ黒に、ヨレヨレになったヒモを脚につけたまま、そのガンは帰ってきたのだ▼総監督はジャック・ペランです。若いときは繊細な二枚目として映画に出演し「家族日誌」でマルチェロ・マストロヤンニと、「ロシュフォールの恋人たち」でカトリーヌ・ドヌーブと、「ビッグ・ガン」でアラン・ドロンと共演、また「ニューシネマ・パラダイス」ではひさしぶりに銀幕での存在感を示しました。どっちかというと鳴かず飛ばずだった俳優業に比べ、彼の本領はプロデュースにあります。27歳で初プロデュースした「Z」がアカデミー外国語映画賞、「ミクロコスモス」でセザール賞プロデューサー賞を受賞。本作はアカデミー賞ドキュメンタリー長編部門にノミネートされています。

 

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