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特集「銀幕のアーティスト」

2015年12月29日

特集「銀幕のアーティスト5」⑥
アーティスト(2012年 恋愛映画)

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監督 ミシェル・アナヴィシウス

出演 ジャン・デュジャルダン/ベレニス・ベジョ/ジェームズ・クロムウェル

シネマ365日 No.1614

助けられてばかりの男

特集「銀幕のアーティスト5」

ハリウッドは1920年代、サイレントからトーキーへの移行期に、俳優や映画・スタジオ関係者になにかひどいことをして、罪の意識か後ろめたさを引きずってきたのだろうか。そうとでも思わないと、この映画がオスカーの作品賞、監督賞、主演男優賞、作曲賞、衣装デザイン賞を受賞した理由がイマイチ考えにくい。選択の判断を過ったサイレントのスターが、時代に取り残され、トップの座から転落、落ちぶれていく。逆にトーキーに出演する新人女優は脚光を浴び、栄光を手中にするばかりか、昔世話になった恩人を忘れず、再び銀幕の世界によみがえらせる。いいお話である、今や過去の遺物とみなされそうな、報恩感謝の念を忘れていない、温かい心の人物がいることに感激する。映画界から見放された男は1929年の世界恐慌の煽りをくい、株価は暴落、破産したあげく、妻から家を出て行けといわれる。全財産をつぎこみ自ら脚本を書き、監督した映画は大コケの閑古鳥。自分が面倒を見た新人女優の作品は、となりの映画館で行列ができる大ヒット▼主人公の名前はジョージ(ジャン・デュジャルダン)、女優はペピー(ベレニス・ベジョ)。ペピーも成功者の常で、つい傲慢にも、ジョージの前でサイレント役者をこきおろした。ペピーは恋人とともに非礼を詫びに来たが、そのとき彼女が見たジョージはすでに見る影もない。妻が去り、運転手も解雇し、ジョージの生活は落ちぶれるいっぽう。心をいためたペピーは、ジョージがオークションにかけた家財道具をひそかに買いつけ、カムバックを助けようとしていた。酔ったジョージは火事を出す。かつてのスターが酒浸りのあげく焼け死にかけたと、新聞は大きく報道し、ペピーは病院にかけつける。ジョージが炎のなかで、最後まで手離さなかったフィルムは、ペピーが初めてエキストラとして採用され、ジョージと共演した映画だった。ペピーはジョージを引き取って自宅で療養させることにする▼ペピーの家で手厚い看護を受けたジョージは、ある日、広い一室に自分の家具家財がすべて揃っているのを見る。ジョージのプライドはズタズタ、焼け跡の自宅に戻りピストルで自殺しようとしたところへ、ペピーがかけつけ、あなたを傷つけるつもりはなかった、ただ役にたちたかっただけだと涙ながらに言う。このセリフはもちろん字幕で出る。ペピーはジョージを復帰させるいい考えがあると打ち明ける。それはミュージカルだった。ジョージはフランスなまりのある英語でしゃべらなくてもいいし、ペピーと踊る見事なタップのペアダンスは圧巻だった。映画会社の社長は成功を確信し、ふたりの主演でミュージカルを撮ることを決める。以上なのですけどね、なんというか、そら、ジョージの運が悪いと言ってしまえばそれまでなのだけど、トーキーへの出演要請を断ったのは彼自身だし、奥さんだって、ヒットしているトーキー映画を見るべきだと助言しているのね▼彼が私財をはたいて作った映画のエンドというのが、砂地獄に飲み込まれて最後は手だけがもがいているという、これじゃサイレントだろうとトーキーだろうと当たるはずないわと思う、陰々滅々の映画よ。ジョージの身の回りの世話をしていた執事兼運転手のクリフトン(ジェームズ・クロムウェル)もまた、ペピーにひきとられ、彼女のもとで働いていた。至れり、尽くせりでジョージは助けられるのである。これは才能ある若くてきれいな女がサクセスし、恩人を助ける強く美しい物語というより、先見の明のない男が、仕事に見放され、酒を飲んでクダまいていても、結局は自分を愛する女が救いの手をさしのべてくれる、ただの調子のよすぎる映画ではないのか。主演のジャン・デュジャルダンがアカデミー主演男優賞なのは、ベニヤ板に目鼻をつけたような、ノッペリした大昔の美男顔が、あまりに見事に決まっていたからでしょうね。

 

 

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