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アニマルハート

2011年11月21日

「ヘラジカがふってきた」

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アンドレアス・シュタインヘーフェ著
鈴木仁子・訳   早川書房

ムースから学ぶあきらめない生き方

 ミスター・ムースはクリスマスの2週間前、天井をつきやぶってワーグナー家に降ってきたヘラジカだ。スカンジナビアに向かって走っているときに、カーブをきりそこねて落ちてきた。ムースは一家の居候になる。これがまた酸いも甘いもかみわけた訳知りのヘラジカで、子供たちばかりでなく、お母さんもおばあさんもムースが大好きになる。ムースの夢はクリスマスにボス(つまりサンタ)のそりをひくことだが、ライバルがたくさんいる。子供たちはムースと話すうち、世の中って思う通りいかないんだとか、でもどんな難しいことも、あきらめないで、知恵を働かせばなんとかなるんだ、約束を守るって立派なことだ、というようなことを考えるが、教訓めいていないところがいい。別れの日がきた。ムースは晴れてボスのそりをひく夢をかなえる。去りぎわにキキ(女の子の名前)のあごを鼻づらでやわらかくもちあげ、ムースがいう。
 「きみのひとみに乾杯」
 彼はワーグナー家でみた「カサブランカ」がすっかり気に入っていたのだ。ムースは粋なのである。
  子供向けだからと甘いせりふにもせず「教える」という調子にもしていないところが物語を厚くしている。著者は1962年ドイツのバッテンベルク生まれ。本書は1955年出版以来、著者の作品のなかでも人気作だ。

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